出版社内容情報
日露戦争で日本海軍がバルチック艦隊を撃破した裏には、無線開発者たちの知られざるドラマがあった! 発見と感動の歴史小説。
内容説明
1900年代初頭。日清、日露の二戦争の間に、通信技術は手旗から無線へと飛躍的に進化。日本海軍は戦況を左右する無線機の独自開発を決定。科学者・木村駿吉は、原理すら解明されていない無線機の改良を手探りで進めていく。彼らの血と汗の結晶、三六式無線機を搭載し、日本海軍は当時最強と謳われたバルチック艦隊を迎え撃つ―。迫力の筆致で歴史の行間に潜むドラマを活写した、傑作書き下ろし。
著者等紹介
岩井三四二[イワイミヨジ]
1958年岐阜県生まれ。96年「一所懸命」でデビュー。同作品で第64回小説現代新人賞を受賞。98年「簒奪者」で第5回歴史群像大賞、2003年『月ノ浦惣庄公事置書』で第10回松本清張賞、04年「村を助くは誰ぞ」で第28回歴史文学賞、08年『清佑、ただいま在庄』で第14回中山義秀文学賞、14年『異国合戦 蒙古襲来異聞』で第4回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。他に著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
43
日清から日露の戦争の間の通販手段を知ることができました。かつては旗であったが、戦況を左右する独自の開発をします。それが無線。無線を武器にバルチック艦隊を迎え撃つのにはドキドキしました。歴史の道間に無線開発というドラマがあったのですね。2023/04/25
鮫島英一
13
個人的な話題になるが、実のところ僕は無線機屋の末席を汚している。僕のような職業を持つ者にとって偉大な先駆者である木村駿吉博士は神様みたいな御方。 原理不明、部品もない、しかも3年で80海里も先に通信可能な無線機を量産化しろ!とか無茶苦茶な要求が博士に下された。最初はどこか達観していたが、国家存亡を賭けた運命の海戦に間に合うか否かが自分にかかるという重圧に耐え、見事完遂成されました。無線機が国家存亡の危機を救ったという事実に、無線機屋の一人として感動や誇りを覚えずにはいられない。2022/05/02
9分9厘
7
「タ」は夜明けの空を飛んだ。なんと美しいタイトル。 日露戦争に活躍した無線開発のお話であるのです。 武骨できな臭いお話かと思いきや、登場する技術屋さんも 軍人さんも皆気持ちは一つ「日本を、この国を守りたい」 という崇高な思いを持ち、あの強大なロシアという 国に挑んでいくのです。いささか変人の趣のある 主人公木村駿吉ですが、その変人さも「ひたむき」に変換できます彼あってこそ現代のスマホがあるのです。 技術者の「ひたむき」なものづくりの積み重ねがあったことを忘れてはいけない。 2022/05/23
minami18th
6
一気に読まされた。日清戦争、日露戦争を背景に、日本は如何にして無線という技術をモノにしたか。終盤の海戦の場面は息を詰めて読んでしまった。しかし主人公の木村駿吉が、あの咸臨丸の司令官の木村摂津守の息子ってのはビックリした。読んで損のない傑作と思う。2022/04/21
熱東風(あちこち)
5
面白かった。/日清~日露戦争の頃に、無線による通信機器を研究開発した人達の物語。主人公は木村駿吉ということになっているけど、山本権兵衛の甥の英輔や外波内蔵吉も大きな役割を果たす。/てっきり無線通信の有効距離が飛躍的に向上する大発見でもあったのかと思いきや、地道に一つ一つ問題を解決し改良する積み重ねが描かれている。個人的には興味深く読めたけど、地味すぎて世間受けは良くないんじゃないかなぁと余計な心配したり。/とはいえ、やはり日本海海戦での無線の果たした役割を思うと感無量。/今の携帯電話にも繋がる話。2022/04/15