出版社内容情報
探偵小説好きの元候爵大河原の秘書となった武彦は、異様な犯罪の渦中に巻き込まれていき・・(「化人幻戯」)。「月と手袋」も収録。
内容説明
実業家の大河原の秘書となった武彦青年は、美貌の由美子夫人に恋心を抱く。彼女に翻弄される日々の中、次々と起こる変死事件に巻き込まれていき…(「化人幻戯」)。シナリオ・ライターの克彦は、高利貸しの重郎の妻・あけみと恋仲にあった。ある日、重郎を殺してしまった彼は、あけみとともに巧妙なトリックで捜査の手から逃れようとする(「月と手袋」)。名探偵・明智が愛欲にまみれた犯人を追う!
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
1894年三重県生まれ。1965年7月28日、逝去。大正から昭和にかけて日本を代表する推理小説作家。日本探偵作家クラブ初代会長、日本推理作家協会初代理事長。正五位勲三等瑞宝章を受章。早稲田大学を卒業後多くの職業を経て、23年雑誌「新青年」に掲載された「二銭銅貨」でデビュー。以後、明智小五郎が活躍する「D坂の殺人事件」「心理試験」などの探偵小説を次々と発表。早くから海外の小説にも造詣が深く、怪奇小説や幻想小説、犯罪小説を数多く執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベル@bell-zou
27
桃色のさかな。ピンクでもなく魚でもないこの字面だからこその艶めかしさ。雌蟷螂のごとく包み込み、喰らう。女はそれを愛情の極致という。これぞサイコパス、「化人幻戯(けにんげんぎ)」。その名だけでプレッシャーを与える登場しない明智小五郎。後ろ暗いことがあるからこそ追い詰められていく、心理戦「月と手袋」。二篇とも凝ったトリックが詳細に描かれているが、乱歩の魅力は無駄のない文章からありありと浮かぶ情景描写だと思う。そして人の隠れた一面を意地の悪いほどに描いてみせるのだ。久しぶりの乱歩、やはり面白いなぁ。2023/03/19
Gen Kato
6
内容自体は何度目かわからない再読。『化人幻戯』はヒロインの性格造形に尽きる。『月と手袋』は倒叙ものだし、戦前とは趣を変え、乱歩は「心理」が描きたかったんだな、と思ったり。あと乱歩、お風呂場が好きだよね…2022/01/17
恵美
5
「化人幻戯」は由美子が悪の魅力があって素敵。明智は由美子を理解できないと斬り捨てていたけど、物語を面白くしてくださいますよ。ミステリーや由美子の妖しい魅力もいいけど、戦後間もないころにテープレコーダーがあったのか、とか、渋谷駅から徒歩5分に一介の会社員が住めたのか、とか、時代背景も面白い。2022/10/14
happy1972
2
小学生の時に読んだ白い羽の謎の大人版。 登場人物は朧げに記憶していたが話の内容は覚えていなかった。 50になった明智が登場するのは覚えていた。今の自分と同じ歳。 犯罪の形態が現在ではよくあるパターンになっている気がする。 殺人が愛欲の極致 2023/10/09
RS
2
解説によると戦後乱歩は活劇ではなく本格にチャレンジしたようなので「化人幻戯」「月と手袋」ともにそのテイストを入れた作品と思われる。読者に謎解きを求めていないので、あくまでテイスト。何となくのエロさ、異様さは乱歩らしい。2022/02/13