出版社内容情報
鎌倉時代は、権力闘争の時代だった。若狭局は自らの子を征夷大将軍にすると誓い、そのために他人の子を食らう鬼にでもなる──。
内容説明
鎌倉幕府草創期、まさに権力闘争の時代だった。権力の中枢を担う源氏の乳母一族として比企氏は力をつけていく。そして、比企の血を継ぐ若狭局は、鎌倉殿・源頼家の妻となり、長男を出産。北条氏との権力争いが激化するなか、若狭は幼いころ経験した親族の不幸な境遇から、強い決心を持っていた。我が子を鎌倉殿にするためには、他人の子を喰らう鬼にでもなる―。激動の転換期を描く時代小説。
著者等紹介
篠綾子[シノアヤコ]
1971年埼玉県生まれ。2000年『春の夜の夢のごとく 新平家公達草紙』で第4回健友館文学賞を受賞し、デビュー。05年「虚空の花」で第12回九州さが大衆文学賞佳作、19年『青山に在り』で第1回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞。「更紗屋おりん雛形帖」(17年第6回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞)などシリーズ作品も多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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真理そら
64
大河ドラマが鎌倉時代を取り上げてくれるので鎌倉時代の作品が沢山出版されて嬉しい。川越出身の作者の河越氏つながりの義経の妻・郷姫の物語(義経と郷姫)も楽しく読んだが、この作品は頼家の側室になった比企氏の娘若狭局(竹御所鞠子の母と言われている)の物語。二代目の頼家の時代は御家人13人の合議制を始めたが北条氏が圧倒的な権力を握るこの時代では機能しにくいシステムではあった。源氏の血は呪われているかのような絶え方をするのでこの一族の物語は悲劇的だが、この作品はヒロイン若狭局の明るさが救いになっている。2022/01/01
エドワード
28
鎌倉幕府二代将軍頼家の妻で比企能員の娘、若狭局の視点から見た幕府内の緊迫した政争。能員の姉妹は、娘を源範頼と義経に嫁がせたため、悲劇の最期を遂げる。姉と弟のように育った頼家と若狭局は結ばれる。頼朝の妻・政子の実家である北条氏が台頭する中、頼家の嫡男・一幡の母として、自らの子を守るため、他人の子を喰らう鬼子母神になる決心で北条氏と戦う若狭局の強さ、冷静さ、賢明さが印象的だ。北条氏は、政子、義時、阿波局、全てが不気味で恐ろしい。源氏の血は呪われている。何度読んでも、誰が描いても、鎌倉幕府の物語は悲劇である。2023/08/03
moonlight
25
2代目の鎌倉殿、源頼家の妻となった若狭局の物語。活発で聡明な少女時代も甘やかな思春期も、背後には常に血で血を洗う権力闘争が繰り広げられており、男子を産んだことで自分もその渦に巻き込まれてしまった悲しい物語。政治的な部分はダイジェスト風にサクサク進み、比企一族と北条一族の関係がわかりやすい。討たれる前に討たねば、を繰り返して直系男子が次々といなくなった源家、それぞれの母たち妻たちの嘆きに満ちた時代だったのだな。2024/11/30
なおお
12
頼朝に仕える家の物語。2代目頼家の妻となる若狭局は、後継ぎとなる長男を出産するが、権力闘争に巻き込まれる。それにしても、頼朝はこんなにも親族や従者を殺していたのかと驚く。弟義経だけてはなかった。北条政子が登場するが、どうしても大河の女優さんの顔になってしまう。2022/02/23
KT1123
4
鎌倉時代黎明期、源頼朝の長男万寿(頼家)の乳母は比企家。頼家の乳姉妹でもある早苗(若狭局)は頼家の妻(正妻ではない)となって一幡を産む。かたや頼朝の妻政子と、その次男千幡の乳母は北条氏。頼朝自身の乳母も比企家であり、乳母同士である比企と北条の権力争いに加えて源氏の凄まじい一族の切り捨てを背景に、若狭局を中心に話が進む。複雑怪奇な時代だが、快活な若狭のキャラクターが意表をついてとても良い。最終的に比企は北条に負け、若狭と一幡も自刃するが、源氏の末路も悲劇的なんだよね。2021/12/04
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- 和書
- 父 岩波文庫創刊書目復刻