出版社内容情報
“お騒がせグラビティー"のふたりは、まさに地下芸人だった。十年経っても売れる気配もない。赤塚賞受賞の著者が描く傑作長編。ジャンプ小説新人賞 銀賞受賞作品。
内容説明
中学校からの友人であるオダと広瀬がお笑いコンビ・お騒がせグラビティーを結成して早十年。未だ一向に売れる気配がなく、周囲の芸人も次々と引退していく中、何が面白いのかもわからなくなったオダは、広瀬からコンビ解散を告げられてしまう。解散まであと一か月。オダが最後にすることは…?元芸人の著者がひたすらに笑いを追求する者たちを描いたデビュー作。ジャンプ小説新人賞受賞。
著者等紹介
おぎぬまX[オギヌマエックス]
1988年東京都生まれ。元お笑い芸人。ギャグ漫画家として2019年「だるまさんがころんだ時空伝」で第91回赤塚賞入選。同賞29年ぶりの入選受賞者として話題となる。20年「地下芸人」でジャンプ小説新人賞2019フリー部門銀賞受賞。『地下芸人』が小説家デビュー作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きたさん
17
激レアさんでおなじみの漫画家、おぎぬまXさんの書かれた売れない芸人コンビを描いた小説。なんかもう切なくて、とてもリアルさを感じました。こんなに辛くて苦しいのに、でもその世界が好きなんだよね、という沼のような話。2021/06/30
須戸
17
大体は人気が出てきた後に興味を持つようになる人間で申し訳ないと一旦考えたけれど、芸人になりたくてなった人達なのだから別に良いかとも考えた。作中の登場人物だとネタを見たら面白いと感じそうなのは三ツ星だけどすごいと感じそうなのは半額ボーイズで、好きなのはお騒がせグラビティー(ただしネタではなく普段の方)だから、お笑いとは何かという問いが浮かび上がって、正解は見つからなさそうと思った。2021/01/26
Kanonlicht
11
芸人の世界を舞台にした物語が総じて出口の見えない閉塞感とすさんだトーンになるのは、むしろそれが普通で、脚光を浴びることは奇跡に近いから。元芸人が書いているだけに、それが痛いほどに伝わってくる。「職業・お笑い芸人」が今現在どれぐらい存在するのかはわからないけれど、テレビで見るような芸人たちは、たとえその他大勢の出演であっても、この話のような苦しい時代を乗り越えたごく一部の成功者なんだろうな。芸に対するスタンスの点でさまざまな類型の芸人が出てくるのも興味深かった。2021/10/27
harukawani
10
全然キラキラしてないし、物語がドラマチックになるような熱さも、登場する芸人たちは持ち合わせていない。それでも、地下のその場所から離れられない芸人たちの姿が、なかなか良い。売れる未来は全く見えないけど、なんかカッコよくて、なんか羨ましくなる。芸人を辞めた作者だからこそ書ける芸人像なのかも。あえて言うなら、作中のネタがあまり面白くないのが残念だなと、『おもろい以外いらんねん』と比べて。小説で笑いを書くのって、たぶんいちばん難しい。2021/02/19
sugarpon
7
これを書いた元芸人さん、私が大好きな事務所のご出身なんで、少々複雑な気持ちで読ませていただきました…。でも、お笑い好きで芸人さんを志した人にとって、いくら厳しくても希望がなくても、なかなかやめられないものなんだろうなあ。最後に作者さんとカズレーザーさんの対談が載っていますが、カズさんが「もう自分は芸人だとは思っていない」と言っているように、芸人さんにも色々な生き方、選択肢があるのだということを再認識しました。こういう賢い選択ができるかどうかはまた別問題ですが。2021/01/06