出版社内容情報
せとうち じゃくちょう 瀬戸内晴美 井上荒野 いのうえ あれの 寂庵 瀬尾まなほ 秘書 66歳
内容説明
愛はままならない。だがら死ぬまで愛を求める―。舌癌で亡くなった夫の愛人へ妻からの謝罪の手紙。私は鬼です、蛇です。そこには最期の壮絶なやり取りが告白されていた。(「妻の告白」)五歳のぼくが捨てられた日。大好きなママがこんなにいやな声をはりあげるようになったのはいつからだろう。(「その朝」)ちりばめられた愛のカケラが降りそそぐ、齢九十七の著者による初めての恋愛掌小説集。
著者等紹介
瀬戸内寂聴[セトウチジャクチョウ]
1922年徳島生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で第2回女流文学賞受賞。73年得度、筆名を晴美から法名の寂聴に変更。92年『花に問え』で第28回谷崎潤一郎賞、96年『白道』で第46回芸術選奨文部大臣賞。98年『源氏物語』(全10巻)の現代語訳完訳の完成。2001年『場所』で第54回野間文芸賞受賞。06年度文化勲章受章。11年『風景』で第39回泉鏡花文学賞、17年朝日賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
98
5年前に単行本で読んだ。この度、文庫化と聞き手に取りました。一篇が5頁足らずの手のひら小説ですが、起承転結の整ったムダを削ぎ落としたテンポのいい文章で読み易い。だからと言って、決して一気な流し読みを許しません。一篇一篇立ち止まって考えさせられる、なかなか奥が深い中身の濃い小説集です。寂聴さんならではの、男と女の人生、愛と性の喜び、悲しみ、希望、欲望、嫉妬…その粋を綴った30編の小説集は面白く愉しめます。97歳、今もって健筆をふるわれる寂聴さんに心から敬意を表したいと思います。2019/09/26
のんちゃん
37
今から40年程前、学生だった頃、読書家の友人が「瀬戸内寂聴って大っ嫌い!子供捨てて自分の不倫を正当化する為の本ばかり書いている」という様な事を言っていた。私は当時、氏の作品の読書経験はなく、時が経ち氏の説法を読んだり、映像を見聞したりして、氏には好感を抱いた。そしてこの度、私は氏の小説を初めて読んだ。今は齢人生半ばを過ぎた私と友人である。この人生で培った膨大な経験が、若い頃なら友人と同じ感想だったと思われる氏の小説を私に理解させた。きっと今なら友人も私と同じ思いだろう。今度会ったら尋ねてみたいと思う。2022/09/19
どぶねずみ
35
愛をテーマにしたショートショート。数年前に発売されたものだったので、これ90歳過ぎてから書かれたものなの?と疑うような内容だが、おそらくご自身の実体験を元に書かれているのだと推測できるし、あとがきに井上荒野さんもそのように書かれている。身体を求めるだけではなく、家族愛もあり、最後にハッとさせられるものばかりだった。たまにはショートもいいもんだな。子どもを置いて家を出ていく母の気持ち、今なら私の母の気持ちも理解できるよ。2021/11/24
aloha0307
30
”人は、死ぬまで、愛を求める” その通りですね✿ 寂聴さんの掌小説集...まさに、原稿用紙から直接読み味わった感がある。殆どは寂聴さんの経験された実話なのだろう 様々な男女の愛(回想を含め) その多くは愛の終わる気配が起点となって、ねっとりと芯からの心情を吐露...どうして別れを告げる側のほうがこんなに淋しく、切ないのか...2020/05/31
山猫
17
描かれているのは求愛&別離。「『嘘つきみっちゃん』の娘」の解説が興味深い。モデルは(実在架空取り混ぜて)あの人、という作品もあり、背負い投げを食らったり食らわせたりの男と女。イマドキ、デモ?と思ったら、SEALDsねえ。同士ってのは夫婦なら最強かもしれないけど、恋人としてはキツいぞ。覚悟あるのか?春を鬻いだり、夫を買ったり。2019/12/31