出版社内容情報
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内容説明
マルティン・ハイデガー、カール・ヤスパース、ギュンター・アンダース、ハンナ・アーレント、ハンス・ヨナス、ジャック・デリダ、ジャン=ピエール・デュピュイ。本書は原子力(核兵器と原子力発電)をめぐる七人の代表的な哲学者の考えを紹介し、それぞれの人と思想の関係を整理する。技術、自然、そして人間―。原子力の脅威にさらされた世界はどのようなもので、そうした世界に生きる人間はどのように存在しているのか、その根源を問うていく。
目次
第1章 原子力時代の思考―マルティン・ハイデガー
第2章 世界平和と原子力―カール・ヤスパース
第3章 想像力の拡張―ギュンター・アンダース
第4章 世界の砂漠化―ハンナ・アーレント
第5章 未来世代への責任―ハンス・ヨナス
第6章 記憶の破壊―ジャック・デリダ
第7章 不可能な破局―ジャン=ピエール・デュピュイ
著者等紹介
戸谷洋志[トヤヒロシ]
1988年東京都生まれ。哲学研究者、大阪大学特任助教。法政大学文学部哲学科卒業、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現代ドイツ思想を軸に据え、テクノロジーと社会の関係を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
78
7人の哲学者の考え方が紹介されている:ハイデガー/ヤスパース/アンダース/アーレント/ヨナス/デリダ/デュピュイ。それぞれの立場が鮮明になって面白い。ヤスパースやアンダースを中心として、多くの哲学者が、人類を破滅に追い込む核兵器の問題として原子力を論じているのに対して、ヨナスやデュピュイは、「原子力」というエネルギーの本質を踏まえた議論を展開している。「核兵器の危険性は自明であるが、原子力発電の危険性は自明ではない。自明でない危険の方が一層危険」という警鐘は、倫理学者としてのハンス・ヨナスの矜持であろう。2021/01/24
けんとまん1007
53
哲学。数年前から、自分の中で大きなテーマになっている。さらに、原子力も同じ意味合いを持つ。その原子力をめぐる七人の哲学者の考察。七人の侍のようでもある。捉え方はいろいろあるが、人間の世界を超えているという点では共通するものがあると思う。平和利用というまやかし。一旦、事が起きてしまうと人間の存在自体が危うい・・・それは、事後の判断そのものができないということ。この点と、長期的視点で考えること・・次の世代のことを考えるか否か。2021/04/20
ハイポ
18
■原子力について論じた7人の哲学者の思想をアンソロジーのように解説した本。7人の哲学者の論は三者三様だが、共通する主張も抽出できる。■原子力の脅威は3点。①物理的な破壊力が過大。②その破壊性による人間の記憶・記録の壊滅。③潜在的な危機への思考能力低下。■原子力の哲学の必要性。哲学は自然科学の有限性3点を補いうる。①自然科学による予知では不十分。②危機を科学的に予測できても、人間はそれを信じられない。③科学はどう行動すべきか教えない。■哲学が提示する対応も3点。①領域横断的対話。②想像力。③熟慮する態度。2022/08/23
タナカとダイアローグ
13
原子力という技術・科学が哲学の対象なのかと関心から読む。ハイデガーの技術論は岡本さんの著作で読んでいたが、なるほど一流哲学者は未曾有の事態に備える。自然科学だけで考えられない問題たちを人文知で考える必要性について。プロメテウス的落差として大量破壊兵器を考えたり、無尽蔵のエネルギーと引き換えに数十万年の汚染で後世に課題を引き継いでしまう原子力発電など、確かに科学の範疇でない問題を扱うことができるのは哲学。市民や親の視点から技術を考えないと暴走する科学を止められない。AIの課題も同じ。SFのすすめでハクスリー2023/09/23
Iwata Kentaro
10
とても面白い読書体験だった。哲学者の書くものはそもそも「何が主題なのか」が素人には分かりづらく、クリティークも反論も宙に浮くことが多い。しかしある特定のトピックについて哲学者が論じるものなら分かりやすい。今回は原子力をテーマに哲学者が論考するのだが、その思考プロセスが理解しやすくて興味深かった。多くはリスクの業界で語り尽くされたことで「それはもう議論されてるよ」な内容だし、議論が「飛ぶ」ことも多かったのだが(SFとか!)それでもハイデガーやヤスパースの言葉にハッとさせられることもあり、知的刺激は多々。2023/04/22