出版社内容情報
一貫して戦争や国家を問うてきた著者の原点となったのは十四歳での敗戦体験だった。少女が軍国少女となり日に日に戦争に巻き込まれていく様を自身の記憶と膨大な資料から回顧し綴るノンフィクション。
内容説明
「昭和」を見つめ、一貫して戦争や国家を問うてきた著者の原点となったのは、一九四五年、十四歳での敗戦体験だった。家族と渡った満州・吉林。敗戦後の難民生活は一年に及ぶ。「棄民」ともいうべき壮絶な日々、そして一家での日本への引き揚げ…。十四歳という多感な少女が軍国少女となり、日に日に戦争に巻き込まれていく様を、自身の記憶と膨大な資料から丁寧に回顧し綴る。
目次
十四歳の少女
秘密
王道楽土
戸籍騰本
学徒動員・無炊飯
水曲柳開拓団
八月十五日・敗戦
いやな記憶
蟄居の日々
内戦下
旧陸軍兵舎
日本へ
著者等紹介
澤地久枝[サワチヒサエ]
ノンフィクション作家。1930年東京生まれ。49年中央公論社に入社。63年「婦人公論」編集部次長を最後に退社。86年菊池寛賞、2008年朝日賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
68
2018年332冊め。ミッドウェー海戦における日米双方の全戦没者を特定するという偉業を行った著者。彼女を駆り立てたものは、敗戦から引き揚げまでの1年で見聞きした満州での日々だったかもしれない。戦犯の逮捕も日本が民主主義になったことも知らず、閉ざされた収容所生活。暴徒とソ連軍に囲まれて生き延び、果てのない大地を歩いた人々を思う。2018/07/16
かっぱ
40
主語を「私」ではなく「少女」とし、自身の体験を他人の体験のように淡々と綴る書き方が、感情移入がし辛く、読み進めにくく感じてしまった。戦争というのはそれだけ多感な時代の少女から感情をそいでしまうものなのか。「知らなかった」という言葉が多用され、「少女」は戦争が何かを知らないまま、戦争の中に身を投じられていたことがわかる。その中で大人の女である少女の母は冷静にこの戦争の辿りつく先を見ている。2016/06/12
スプーン
38
著者の壮絶な引き揚げ体験記。 戦中・戦後期の異常さが伝わって来ます。 今、スマホで戦争ゲームをしている場合ではないし、 模造刀をリュックに入れて秋葉原を歩いている場合でもない。 ホントに、つくづくそう思う。2020/05/22
とよぽん
36
満州からの引揚げ、というより太平洋戦争末期の満州での生活が中心だった。著者が14歳の頃に体験したことを「少女」を語り手にして、明晰に淡々と描かれている。80歳を超えた著者が14歳のお孫さんの世代に向けて、渾身のメッセージを送っている。中学生、高校生に是非とも読んでもらいたい本だ。3学期が始まったら、生徒にすすめよう。2017/12/30
kum
34
著者が経験した満州での敗戦、難民生活と日本への引き揚げを記憶を辿って記したという本書。「わたしは軍国少女だった」と帯にある。戦時下の思想に染められた14歳の少女にとっての戦争は「考えて答えを出すことのない日々」であったというくだりに、子供たちまでもが否応なく巻き込まれざるを得なかった戦争の残酷さをあらためて思う。多くの人が命を落とした戦争を、少女の目を通してまた別の角度から知ることが出来た気がする。澤地さんがあとがきで書かれている「断絶」や「無知」は次の世代の不幸に結びつくという言葉を重く受け止めた。2021/08/07