集英社新書
なぜ『三四郎』は悲恋に終わるのか―「誤配」で読み解く近代文学

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  • サイズ 新書判/ページ数 198p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784087207767
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0295

出版社内容情報

夏目漱石は「悲恋小説家」だった。近代文学の名作の多くが「悲恋」に終わるのはなぜなのか。「誤配」という概念を鍵にして、近代文学と現代文学との間に横たわる大きな断層を見出す、画期的な文学論。

内容説明

夏目漱石『三四郎』『それから』、田山花袋『蒲団』、森鴎外『雁』、川端康成『雪国』、三島由紀夫『春の雪』…近代文学の名作の多くが「悲恋小説」なのはなぜなのか。著者は哲学者ジャック・デリダが用いた「誤配」という概念を鍵にしてそれらを再解釈する。そして「恋愛」というテーマに留まらない、近代文学と現代文学との間に横たわる大きな断層を見出す。早稲田大学の人気教授が、あの名作に隠された秘密を、全く新しい読み方によって明らかにする一冊。

目次

第1章 悲恋小説作家・夏目漱石
第2章 作家の闘争・田山花袋『蒲団』
第3章 読者の恋・森鴎外『雁』
第4章 誰がシャッターを切ったのか・武者小路実篤『友情』
第5章 読まれなかった手紙・志賀直哉『暗夜行路』
第6章 スターの条件・谷崎潤一郎『痴人の愛』
第7章 それを愛と呼んでもいい・川端康成『雪国』
第8章 この甘ったれた若者・石原慎太郎『太陽の季節』
第9章 優雅なニヒリストたち・柴田翔『されどわれらが日々―』
第10章 空虚な中心・三島由紀夫『春の雪』

著者等紹介

石原千秋[イシハラチアキ]
1955年東京都生まれ。専門は日本近代文学研究。成城大学大学院博士課程を経て、1983年東横学園女子短期大学助教授。1993年成城大学文芸学部教授。2003年より早稲田大学教育・総合科学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Gatsby

13
石原氏の著作を読むと、その切れのよさにいつも感心する。この本は「誤配」という考え方をキーに日本の近代文学を読み解くという内容である。誤配はもちろん郵便の誤配から来ているのだか、手紙の誤配だけではなく、人と人との関係についても当てはめることができる考え方で、『三四郎』以外に取り上げられている近代文学の解釈にも有効である。高校・大学以来読んでいなかった作品を再読するときは、「誤配」の考え方を意識して読んでみようと思う。2015/04/05

マカロニ マカロン

8
個人の感想です:B+。恋愛小説は確かに「誤配」があると俄然面白くなる。二人の人間が相思相愛になりましたでは、つまらなくて小説にはならない。彼女が本当に愛しているのは他の人で、私にとっては「誤配」された恋人に過ぎないのではないかという疑念は確かに小説を読む側にわくわく感を与える。『三四郎』が美禰子に出くわした頃、美禰子と野々宮は別れの時期という読み方は興味深い。三四郎の元に美禰子が誤配されてしまう。美禰子はそんなこととは思ってもみない。ストレイシープは誰なのか興味津々。ただし、リアルの世界での誤配は困るが2023/09/22

おおにし

7
手紙が誤配されるところからドラマは始まる、恋愛小説の中の恋文も読者に誤配されたからこそ読めたというワケ。手紙ばかりではなく恋人も誤配される。誤配された恋人たちをテーマに漱石は悲恋小説を書き続けたのだそうだ。文芸評論は余り読んだことがなかったが本書はなかなか面白かった。「暗夜行路」「雪国」「太陽の季節」は今まで読んだことがなかったが、本書であらすじを知って読まなくてよかったと思った。逆に「蒲団」は何だか面白そうで読んでみたくなった。2015/07/10

2
近代の恋愛小説について、「誤配」という表現を用いて考察している。 作品ごとに章立てしているが、既読の作品でないとついていけないと思う。 『三四郎』『蒲団』『暗夜行路』『痴人の愛』『雪国』の章を読んだが、『蒲団』に関する論争が一番面白かった。 『暗夜行路』も賛否両論あるんだろうなと思うが僕は面白いと思ってしまう。 『雪国』は着眼点が露骨すぎて笑った。2017/07/21

osaru

0
いつもの石原氏らしく、名作を一刀両断。今回は「誤配」を非常にわかりやすく応用している点に良さを感じた。これまでどんな現代思想の入門書をよんでもこの概念が分からず、困っていた。ようやくはっきりと掴めた。今度は自分で使ってみよう。あとジラールの「他者の欲望」も。2015/05/29

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