内容説明
旅は一枚の古い写真から始まった。それは、青春の息吹を発散させながら歌う若い頃の母の姿だった―。荒廃した戦後日本の社会に、明るい夢を与えた「歌声喫茶」の誕生に大きく寄与した「灯」の創立メンバーのひとりだった丸山里矢。彼女の一人娘が、母の青春を探す旅に出た。当時の関係者への取材を続けながら、母の生きた時代、激動の戦後日本のある側面を克明に切り取っていく。「青春」という言葉がまだ素晴らしい輝きを持っていた頃を描く、これは感動的なノンフィクションである。
目次
プロローグ(旅支度;一枚の写真 ほか)
第1章 旅立ち(母の過去;里矢、嵐のような上京劇 ほか)
第2章 疾走(女性客;「灯」の人気者 ほか)
第3章 光と影(ふたつの危機;ドーナツ ほか)
第4章 ロンド(大金持ちから極貧へ;縁 ほか)
エピローグ(夢の跡地;ネバーエンディングストーリー)
著者等紹介
丸山明日果[マルヤマアスカ]
1974年東京都生まれ。父は詩人の故丸山辰美、母・里矢は歌声喫茶「灯」の創立メンバーで歌唱指導者第一号。都立杉並高校卒業後、劇団文学座附属演劇研究所、劇団俳優座演技部研究生として学ぶ。その後、映画『尾崎翠を探して~第七官界彷徨』に出演、他に舞台、TVCMなどに出演
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
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新宿にあった歌声喫茶「灯」にかけた青春を描くノンフィクション。歌声喫茶のことはよく知らなかったのだが、喫茶店に来たお客さんが一緒になって歌を歌う場所だったそうだ。昭和の時代が持っていたぬくもり、人と人のつながり、未来への希望といったものを甦らせてくれる内容で、読んでいて胸が熱くなった。特に感動的な場面は「灯」が始まったばかりの時に、店の客全員で『トロイカ』を初めて合唱する場面。「灯」のような見知らぬ人同士が深いつながりを持てる場所が、今もどこかにあると信じたい。(もしかすると読書メーター?)2014/12/19
tkm66
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読み物としてサラッと。2002/12/23