内容説明
闘う弁護士・中坊公平は、いかにして形成されたのか。彼は生涯、約400件にものぼる裁判や事件を担当してきた。庶民の苦しみの中から提起された小さな事件はもとより、日本社会を揺るがした「森永ヒ素ミルク事件」や「住専問題」などの大事件まで、それはあらゆる分野に及ぶ。本書では膨大な記録の中から今も著者の心に残る一四の事件をピックアップして、その内容と思い出を記述した。これは「事件が弁護士を育てる」と語る著者の成長の軌跡でもある。
目次
1 1960年―H鉄工和議申立て事件
2 1962年―「M市場」立ち退き補償事件
3 1967年―貸金返還請求及び暴行事件
4 1970年―タクシー運転手ドライアイス窒息死事件
5 1973年―森永ヒ素ミルク中毒事件
6 1982年―小説のモデル名誉毀損事件
7 1982年―自転車空気入れの欠陥による失明事件
8 1983年―実刑服役者の新聞社に対する謝罪広告請求控訴事件
9 1985年―看護学校生の呉服類購入契約事件
10 1985年―金のペーパー商法・豊田商事事件
11 1987年―ホテルの名称使用差止め事件
12 1992年―グリコ・森永脅迫犯模倣事件
13 1993年―産業廃棄物の不法投棄・豊島事件
14 1996年―不良債権・住専処理事件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
43
2000年刊。とても熱くて心を揺さぶられた。現場主義の弁護士だった著者は、1973年、43歳で担当した森永ヒ素ミルク事件から、ひたむきに戦う人になって行く。この裁判の著者の長い冒頭陳述に呆然とした。余りの悲惨さ残酷さに涙が出た。被害者一万二千人以上、死者130人は実際の半分だという。母親は、事実を認めない企業と国の仕打ちに加え、自らの手で我が子に毒を与えた苦しみに苛まれた。この後に手がけた、豊田商事事件、豊島の不法投棄、住専の不良債権処理などの実態も今さらながら理解できた。人間には意志の力が確かにある2019/10/16
James Hayashi
25
著者の頑張りがなければ豊田商事事件で営業マンから収められた国税局への所得税(13億円)は被害者に戻らなかっただろう。被害金額(総額は2000億円)の一部であるが被害者に戻ったことは大きい。国税局からカネを取るなど並大抵の努力でないことは想像できる。その他、森永ヒ素ミルク事件、住専問題など数々の事件を手掛けた著者の一部が紹介された本。2020/07/11
ニックス
15
有名な弁護士。弁護士として積極的な活動に社会人としてさすがだと思った。一般的に弁護士は、犯人(被疑者)には黙秘を積極的にさせたり、生活保護の弁護で大々的に勝訴とか言ったり、私としてはそれは違うんじゃないかと思う行動が目立つ。弁護士が懲戒処分を受ける等の社会人として他の世界では仕事を続けられない状態でも、平気で続けている人も多く嫌悪感が強かったけど、こういう一般人のために、頑張ってくれている人がいることを認識できて良かった。星42023/12/04
佐島楓
15
この本で「森永ヒ素ミルク中毒事件」と「住専処理事件」について理解することができた。国が責任を負いたがらないのは今も昔も変わらない。2012/07/28
よー
13
森永ヒ素ミルク中毒事件は泣けました。こんな熱い、現場主義の弁護士さんがたくさん増えてくれるといいなあ。2017/08/04