出版社内容情報
ジャンルを越え、小説の面白さをとことんまで追求した画期的アンソロジー。
第7巻「牙が閃く時」は、西村寿行の動物パニック小説の名作「滅びの笛」を中心に、心あたたまる友情から戦慄を禁じ得ない極限の対決まで、幅広い分野にわたる動物小説の傑作16編を網羅!
●編集委員/逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏
[編集室から]
動物小説の巻である。
一貫して「動物」にこだわり続けた作家は戸川幸夫と椋鳩十の二人くらいか。
ここにパニック小説にくくられていた「滅びの笛」を投入させていただいた。
西村寿行は常に変わり続けた作家であり、どの作品を選ぶか最も悩んだ作家の一人である。
編集委員の方々に解説の希望巻をつのったところ、全員がこの巻を挙げられたことを是非申し添えておきたい。
[収録作]
【長編】
西村寿行「滅びの笛」
【短編】
宮沢賢治「猫の事務所」
岡本綺堂「虎」
椋鳩十「片耳の大シカ」
新田次郎「おとし穴」
戸川幸夫「咬ませ犬」
宇能鴻一郎「鯨神」
豊田有恒「火星で最後の……」
藤原審爾「狼よ、はなやかに翔べ」
井上ひさし「冷し馬」
中島らも「クロウリング・キング・スネイク」
【掌編】
広津和郎「狸」
嵐山光三郎「岡野の蛙」
北杜夫「推奨株」
川田弥一郎「青い軌跡」
星新一「不満」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
132
この巻には、動物関連の作品がいっぱい収められています。ショートショートが5編、短編が10作品、長編が1編です。この巻はほとんどの作品を読んだことがなく楽しめました。北杜夫さんの「推奨株」はかなり躁のときに書かれたようです。短編も岡本綺堂から宮沢賢治、豊田有恒、宇能鴻一郎まで多士済々です。長編は西村寿行の「滅びの笛」でやはりすごさがひしひしと感じられます。西村さんのは「君よ、憤怒の河を渉れ」を読んだだけですがいつもエネルギーに圧倒される感じです。2016/05/10
starbro
91
集英社の創業90周年企画 傑作小説大全「冒険の森へ」全20巻完読プロジェクト第十二弾は第7巻「牙が閃く時」です。ようやく60%まで来ました。牙の文字があったので怖い動物ばかりかと思いましたが、本巻は動物エンタティメント小説集でした。収録作全部面白いですが、ショートストーリーは嵐山光三郎の「岡野の蛙」、短編は戸川幸夫の「咬ませ犬」、長編は西村寿行の「滅びの笛」が特にオススメです。それにしてもペスト菌に感染した20億匹の人喰い鼠が集団で襲ってきたら本当怖いでしょうネ。 2016/06/15
sui
31
長編「滅びの笛」が動物パニックモノだと知り借りた一冊。西村寿行さん、名前も初めて聞く作家さんだった。120年に一度開花すると言われるクマザサ。大発生した20億の鼠と、イカれた米国人研究者によって撒かれたペスト菌の恐怖。度重なる警告にも関わらず何の対策も講じず、大惨事になった途端国民を見殺しにする政府。命懸けで立ち向かう数人の男達。よくあるパターンなんだけど・・・鼠群に襲われる描写がめちゃくちゃ怖い。鼠は鼠でもドブネズミ!地を覆い尽くす程の鼠群。振り払っても群がる鼠。耳を齧られ顔を齧られ・・・怖かったー。2017/07/30
あっちゃん
21
滅びの笛目当てで!とにかくエグい鼠パニックもの(笑)鼠の大群に襲われるシーンが、これでもかと連発で、息つく間もない!もちろん、それだけでは無く主人公の妻との微妙な関係も加味してエンタメに!それにしても、山梨県韮崎市って、2年前に月2くらいで出張行っていた所で妙にリアルに想像できてキツいわぁ( ̄▽ ̄)2021/05/13
ぐうぐう
16
『冒険の森へ』第7巻は動物小説が収録されている。動物小説とは言っても、登場する動物は様々、テーマもジャンルも違っている。ただ共通しているのは、動物の目を通して人間社会を映し出そうとする、装置としての役割だ。掌編は、童話的な優しさを感じさせる広津和郎「狸」から始まる。怖さが漂う嵐山光三郎「岡野の蛙」、ユーモアたっぷりの北杜夫「推奨株」、ラスト一行が切れ味を見せる星新一「不満」など、多様なスタイルが楽しい。短編では、椋鳩十の作品が目を引く。「片耳の大シカ」の、堂々たる民話的な語りは貫禄充分だ。(つづく)2016/05/20