講談社現代新書<br> なぜ賃金は上がらないのか―日本経済30年の陥穽

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講談社現代新書
なぜ賃金は上がらないのか―日本経済30年の陥穽

  • 首藤 若菜【著】
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  • 講談社(2026/06発売)
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  • サイズ 新書判/ページ数 224p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784065443583
  • NDC分類 366.4
  • Cコード C0233

出版社内容情報

食品から日用品まで、何もかも驚くほど高くなった。
スーパーで目にする野菜の値段が少しずつ上がっているなと思っていたら、「令和のコメ騒動」が起き、同じ価格でも内容量を減らす「ステルス値上げ」が普通になった。
長く続いたデフレの時代が終わり、生活必需品の値上がりが、暮らしを直撃している。
その分賃金などの収入が上がっていればいいのだが、一向にその実感はない。賃金の上昇率から物価の上昇分を引いた「実質賃金」は4年近くもマイナスが続いていることが示すように、その実感は、統計にもはっきり表れている。
物価上昇のしわ寄せが、暮らしを直撃しているのだ。
いったいなぜこんなことになってしまったのか。
急激な円安によって輸入品やエネルギー価格が上がったためなのか。
企業が値上げで儲かった分を労働者に還元せず、「内部留保」として貯めこんでいるためか。
日本人の働き方は効率が悪く、「労働生産性」が低いためか。
各企業の労働組合の交渉力が弱く、大企業の言うがままになってしまっているのか。
本書では、こうした俗説を一つひとつ検証し、その当否を探っていく。
もう一つ、いま労働の現場でもっともよく聴かれる言葉が「人手不足」である。
とくに飲食や宿泊などのサービス業では、客を集める人気店でも人出が足りないために接客ができず、予約を断るケースもある。
また、介護や医療などの現場の人手不足も深刻で、外国人材の手を借りないと維持できないことがはっきりしている。
なのになぜ、賃金は上がらないのか。

第一線の労働経済学者として活躍する筆者は、物流や運送業界などの現場の声を聴き、その実態を見ることから、日本の賃金が上がらない本当の理由を明かす。
人手不足に悩む労働の現場では、いままで8人で担っていた仕事を7人で回し、同レベルの成果を出す「効率化」を進めてきた。
しかし、現場の労働者の献身的な努力や「カイゼン」によって「効率化」すること自体が、実は、日本の低賃金を固定化している可能性がある、と筆者は言う。
それはいったいどのようなメカニズムによって起こっているのか。
緻密なフィールドワークを基礎とする研究を重ね、日本の低賃金の謎に真正面から挑んだ、画期的な論考。


【目次】

第1章 「実質賃金の低下」をもたらしたものは  17
1 2022年以降に何が起きたか
2 欧米諸国の実質賃金
3 名目賃金はどこで上昇したのか
4 実質賃金の低迷
5 時間当たり実質賃金と労働時間
5‐1 長時間労働の是正
5‐2 短時間労働者の増加
5‐3 ターゲット所得仮説
6 実質賃金低迷の構造
第2章 なぜ人手不足なのに賃金が上がらないのか
1 経済学の常識とのズレ
2 人手不足の業界ほど賃金が上がっていない
2‐1 制度的に価格が決まる分野
2‐2 過当競争と人手不足
3 賃金上昇と経済成長
第3章 実質賃金はどう決まるのか 
1 実質賃金を経済学の数式であらわすと
2 労働生産性――企業が払える賃金の土台
3 労働分配率――付加価値のうちどれだけを労働者に回すのか
4 交易条件――働いて稼いだ所得はどこへ消えていくのか
第4章 誰がコストを引き受けたのか 
1 循環から外れた交易条件
2 負担はどこにあらわれるか
3 日本の調整プロセス
3‐1 利益は圧縮されなかった
3‐2 価格は動かなかった
3‐3 負担は賃金に向かった
4 なぜ賃金が調整弁になったのか
第5章 なぜ価格は調整弁になれなかったのか
1 値上げすると取引喪失になる
2 価格が上がらないという現実:運送業の事例
2‐1 「2024年問題」でも運賃改定できない
2‐2 価格交渉の限界
2‐3 経営者の努力不足で片づけられるのか
3 低価格・低賃金と長時間労働
4 全体最適の「全体」とは
5 その結果何が起きたのか
5‐1 労働による吸収
5‐2 退出なき調整の帰結
第6章 賃金を価格につなげられるか――労働組合の可能性と限界
1 「労働組合がなくても賃金は上がる」のか
2 名目賃金はなぜ上げられなかったのか
3 「失われた賃上げ分」を取り戻すことはできるか
4 賃金上昇が価格上昇につながりにくい労使関係
4‐1 賃金と価格の非対称性
4‐2 生産性向上の取り組み
4‐3 春闘の役割とその変容
第7章 賃上げを起点に考える
1 賃上げが先か生産性が先か
2 賃上げは雇用を減らすか
3 それでも賃上げを起点と考える理由
4 最低賃金の引き上げは何を変えるのか
5 なぜ地域別最低賃金だけでは足りないのか
6 退出をどう受け止めるか
第8章 労働移動と賃金上昇
1 労働移動は賃金を押し上げると考えられている理由
2 労働移動はなぜ難しいのか:ある事例から
3 労働移動の制約
4 転職は増えているのか
5 労働移動を保障する仕組み
第9章 賃金と価格を結び直す
1 デフレは原因ではなく仕組み
2 「現場力」の転換<

内容説明

なぜ物価上昇に伴って賃金が上がらないのか。なぜ物価高騰のしわ寄せが、これほど長いあいだ生活者に押し付けられているのか。働く側も企業の側も苦しい。にもかかわらず、経済全体として豊かさが実感されない。まるで誰も得をしていないように見えるこの状況は、いったいなぜ生じているのか。いま注目の労働経済学者があざやかに解き明かす!

目次

第1章 「実質賃金の低下」をもたらしたものは
第2章 なぜ人手不足なのに賃金が上がらないのか
第3章 実質賃金はどう決まるのか
第4章 誰がコストを引き受けたのか
第5章 なぜ価格は調整弁になれなかったのか
第6章 賃金を価格に反映できない構造―労働組合の可能性と限界
第7章 賃上げを起点に考える
第8章 労働移動と賃金上昇
第9章 賃金と価格を結び直す

著者等紹介

首藤若菜[シュトウワカナ]
1973年、東京都生まれ。立教大学経済学部教授。日本女子大学大学院人間生活学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。山形大学人文学部助教授、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス労使関係学部客員研究員、日本女子大学家政学部准教授などを経て現職。専攻は労使関係論、女性労働論。著書に『統合される男女の職場』(勁草書房、2003年=社会政策学会奨励賞、冲永賞受賞)、『グローバル化のなかの労使関係―自動車産業の国際的再編への戦略』(ミネルヴァ書房、2017年=労働関係図書優秀賞、社会政策学会奨励賞受賞)、共著に『間違いだらけの日本の物流』(ウェッジ、2025年=住田物流奨励賞受賞)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

mft

5
結構面白かった。賃金が上がらない、ものの値段が上がらない、経済成長しない、という日本経済の姿が、それらの要素が互いにどのような関係になっているのかということを説明していく。賃金を上げたらインフレになるというのは今の日本において本当だろうか、という見方は新鮮だった2026/06/26

iwtn_

3
労使関係が専門の著者がタイトルの疑問について、交易条件が悪化した日本が、その影響を現場の労働負荷を上げることで吸収してきた、ということを解説している、と読んだ。雇用を悪い条件でも維持することが重要だという規範の下で、長時間労働や時間あたりの低賃金が継続したと。最低賃金の引き上げで限界にきて倒産する企業もあるらしい。やはり交易条件を良くするには、海外に売れるサービスなり、商品が必要なんだろう。元気なのは漫画やアニメ、ゲームなどのIP関連ぐらいか。とはいえ無形資産なので、広く富が分配されるものでもない、か。2026/07/07

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