出版社内容情報
1975年は、日本の音楽にとって特別な年だった。
荒井由実(ユーミン)、中島みゆき、山下達郎、矢沢永吉――のちに「ニューミュージック」と呼ばれる音楽が、はっきりとした輪郭を持ちはじめた年である。しかしそれは、ある日突然、新しいジャンルが誕生したという単純な話ではない。
彼らは現在、ニューミュージックの代表的存在として語られることが多いが、最初から「新しい音楽の担い手」として登場したわけではない。歌謡曲の制作システムの中に身を置きながら、フォークやロック、洋楽の影響を受けつつ、それぞれが微妙に異なるやり方で「自分の音楽」を模索していた。その試行錯誤の積み重ねが、のちにJ-POPへと連なる表現の基層を形づくっていく。
一方で本書は、前時代のスターとしての吉田拓郎、そして職業作曲家たちの存在を、単なる「古い側」としては扱わない。彼らが切り開いた表現や制度があったからこそ、1975年の変化は可能になった。ニューミュージックは、歌謡曲を否定して生まれたのではなく、その内部からズレる形で立ち上がり、やがて日本のポピュラー音楽全体へと影響を広げていったのである。
楽曲の響き、言葉の選び方、録音技術、テレビやレコード会社との関係――。
それらを総合的に見渡すことで、本書は「ニューミュージックとは何だったのか」という問いを、ジャンル論ではなく、音楽の感覚と時代の変化として描き出す。
1975年は、日本の音楽が「誰のものか」を問い直した年だった。
その問いは、かたちを変えながら現在のJ-POPへと受け継がれている。
本書は、その変化のプロセスを、過剰な神話化を避けつつ、音楽そのものに即して描いた一冊だ。
【目次】



