出版社内容情報
日本は高度経済成長も終わっていたが、反面で国際的な責務を果たせと要求されるようになり始めた時期、奇妙な事件や出来事がメディアで賑やかに報じられていた。
ふと目に留まったものを手がかりにして、古井由吉の思考と文章はうねるように展開する。
純文学の代表的な作家と目され、代表作となった長篇小説『槿』により谷崎潤一郎賞を受賞して間もない古井由吉が小説雑誌で連載を始めたものが、単純な時事エッセイに納まるはずはなかった。
日常の底に埋もれている人間の「業」を言葉によって鋭くえぐりつづけるものとなった。
なお、「裸虫」とは人間のこと。「裸」を重ねて「裸々」とし、「ララ」と訓むことですこしでも人間の営みを楽しく書いていこうという試みだった。
【目次】
無言の電話
隣の信長
虚栄のはて
一寸前は小児
火の用心、紳士たち
転びやすき男たち
サドの潤み目
分裂と分別と
徳政令、いまひとたび
ウスザケとマチガイと
日高くして、道は詰まり
午さがりの振れ
ネクタイとシャンデリア
往ね、往ね
淵への静かな行進
あぶな虫
いつまでも若く
物忘れと知ったつもり
個性の行く末
大部屋としもたやと
とりとめもなきもの
われらは聖人以上か
もしも無常迅速を
ロックを突っ張り
解説
年譜
著書目録



