出版社内容情報
生前の埴谷雄高は作家としての時間と労力を可能なかぎり長篇『死霊』の執筆に注いだが、いっぽう思想家としてはさまざまな発信をつづけた。
吉本隆明は埴谷の作品と思想の真価をもっとも深く受けとめた一人である。
『死霊』五章以降、その発表時にはもちろん、折に触れて埴谷の言葉に誠実に応答しつづけた。
ときに鋭い対立をはらんだが、吉本は埴谷への尊敬の念を保ちつづけた。それは埴谷への追悼文「埴谷雄高さんの死に再会して」に明らかである。
長篇『死霊』についての作品論、短篇小説集に付した解説、エッセイ集などへの書評、政治的論文への批評、戦後文学が有効性を失ったと見えた時期になされた論争……と、様々な角度で吉本隆明が埴谷雄高と交わした応酬を本書では集大成する。
本書を読むことは、個人が世界といかに対峙するか知るための、絶好の道しるべとなるであろう。
【目次】
目次:
埴谷雄高『鞭と独楽』『濠渠と風車』
情勢論 5
埴谷雄高論
永久革命者とは何か
『虚空』について
埴谷雄高『墓銘と影絵』
埴谷雄高の軌跡と夢想
埴谷雄高氏への公開状
埴谷雄高『錘鉛と弾機』
『埴谷雄高作品集』推薦のことば
『死霊』考
秘められた自負
認識の皮膚
持続された思惟
情況への発言[一九八四年一一月] 2
政治なんてものはない
重層的な非決定へ
情況への発言[一九八五年七月]
埴谷雄高さんの死に際会して
埴谷さんの訓戒
『死霊』の創作メモを読んで
解説
年譜