出版社内容情報
音楽が鳴り響くとき、彼の世界は新しい光につつまれる──。
ケガで職を失った父と暮らす中学3年生の巧海。生活費に事欠くなか、年上の友人・アマロと「バイト」──夜な夜な自転車の窃盗──をくり返し、金を稼いでいた。いつものように自転車を盗んだその朝、巧海はトラックに積まれたピアノと、そのそばに座る男と出会う。
……弾く?
弾くって。ピアノのこと……?
そこから、巧海の世界は少しずつ動き始める!
【目次】
内容説明
ケガで職を失った父と暮らす中学3年生の巧海。生活費に事欠くなか、年上の友人・アマロと「バイト」―夜な夜な自転車の窃盗―をくり返し、金を稼いでいた。いつものように自転車を盗んだ朝、巧海はトラックに積まれたピアノと、そのそばに座る男と出会う。助けを求めても、ええんやろか。助けてくれと叫んだら本当に助けてくれんのか。ピアノの旋律と共に、巧海の世界は少しずつ動き始める!
著者等紹介
黒川裕子[クロカワユウコ]
大阪府生まれ。作家。京都外国語大学学士、エディンバラ大学修士。2017年に『奏のフォルテ』で第58回講談社児童文学新人賞佳作入選(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まる子
18
職場事故で障害を負った父と暮らす中3の巧海。頼るは父の障害者年金10万円。父はそれを酒やギャンブルに使い込み、巧海は闇バイトに…。心の中では父に「頼むから死んでくれ」と思う日々の中で、彼が目にしたピアノ、押し入れから出したピアニカ、音を奏でた時に彼の中で何かが変わろうとしていたー。彼が大人に頼ることが出来なかったのは周りにそのような人がいなかったから。しかし彼には「生まれてきただけでサイコー、尊い」と、それが子どもの権利である事を教えてくれた人に出会った。巧海のこれからが輝きに満たされますように。2025/07/30
ジジ
5
父親が仕事中に左指を全部切断したことによって職を失い、荒れた結果、母親と妹は家を出てしまい、酒とパチンコに溺れる父を支えるのは中学3年生の主人公の巧海。 父親の障害年金(10万円)では生活ができず、万引きや自転車を窃盗して売る「バイト」を繰り返してなんとか食いつないでいた。 そんなある日、巧海は音楽と出会い、世界の見え方が変わっていく。 というお話。2025/08/04
遠い日
3
貧困の極み。格差の極み。自分ではどうしようもない暮らしの中で、嘯きながら「チェック」を繰り返し、「バイト」と呼ぶ窃盗を繰り返す中3の功海。強烈なパンチをどのページからも浴びながら、苦しさに喉を詰まらせながら読んだ。巧海のことばにできない諦観。彼を取り巻く人々との関わりが切れずに続いてくれと祈るばかりだった。巧海に音楽を知らしめた機会のなんと鮮烈だったことか。頼っていい。縋っていい。大人を使え、巧海。これからの未来は自分のために生きろ。ラストの光はかけがえのない希望だ。2025/07/31
芦屋和音
1
中3の巧海は事故で働けなくなった父と二人暮らし。障害年金だけでは金が足りず万引きや怪しいバイトで食いつなぐ。「頑張ったら」と言われても、頑張ってないからこんな暮らしになってるのか?「自分を大事に」と言われても、誰かが大事にしてくれるわけでもないのに。一体どうすりゃいいんだよ、という巧海の切実な思いに音楽が手を差し伸べる!"今"が大変な子を大人がどうやって救うのか考えさせられる。大阪弁のやり取りさえも心地よいリズムです。2025/08/28
小説大好き
0
力のある作品だと思いました。独特なタイトルに表れているように、文章にセンスを感じます。「チェック」「ブタ人」「ノーマル」といったスラングが持つ貧困のイメージを「泡立て器」「バケツ」といったプラスの要素を秘めた道具のイメージへと転換させる構成も、「ブタ人」のいびきと音楽を対比的に配置し作品を「音」のモチーフで貫いている点も、見事だと思います。気になるのは主人公の巧海がやたらと女性化されているように思えることで、「ハニー」や「ドロシー」という渾名がそれを象徴していると感じます。作者の別作品も読んでみたいです。2025/08/19
-
- 和書
- 玉村警部補の巡礼