出版社内容情報
幼いころに父を亡くした著者は、あるとき、幾晩か続けて大きな蜘蛛が風呂場の天井にいることに気づいた。母にそれをいうと「お父さんかもしれないから、いたずらしてはいけない」と言われてびっくりした、という。かつては、死んだ血縁の者が、場合によっては他の動物になっている、ということを多くの人が信じていたのである。
こうした「業報輪廻」の考えは、仏教思想の中心というよりも、ジャイナ教やヒンドゥー教など東洋の宗教全体の大きな前提になっているという。そして、キリスト教などの一神教がダーウィニズムの挑戦を受けて思想的な見直しを迫られているように、輪廻思想と仏教も、進化論やバイオテクノロジーなどとの対決を迫られている。アレキサンダーの東征や、匈奴の強大化などがもたらした紀元前後の数百年間の仏教の危機の時代を、「阿弥陀仏」という新たな信仰によって乗り切ったように、新たな神話を創生していく必要があるというのだ。
さらに、スーパーマンとしての観世音菩薩、イエスとブッダの説話の類似性、親鸞の仏陀観の変化など、仏教社会の倫理と道徳を支えてきた「輪廻の思想」をめぐる講演と随筆を集成。〔原本:1989年、人文書院刊〕
目次
1
輪廻の思想――インド・中国・日本
2
仏塔信仰と大乗仏教
菩薩の平和思想
ブッダとイエス
3
本願力ということ
親鸞の仏陀観
親鸞における信心の深化
4
マングース物語
人と猿と神
仏教における非神話化
不老長寿
脳死・堕胎・中有
王舎城の温泉
チベットの牧象図
言語同断
蚕と蜘蛛――追悼 抱石庵 久松真一先生
お盆の思い出
海外の三人の師
無相さんと私
武生の雪
木村無相『念佛詩抄』
山頭火と私
内容説明
死んだ血縁の者が、他の動物になっている。かつて多くの人が信じていた「業報輪廻」は、仏教思想の中心というより、東洋のあらゆる宗教の大きな前提である。そして現在、輪廻思想と仏教は、進化論やバイオテクノロジーとの対決のなかで、新たな神話を創生する必要に迫られている。仏教社会の倫理と道徳を支えてきた「輪廻」をめぐる講演と随筆を集成。
目次
1(輪廻の思想―インド・中国・日本)
2(仏塔信仰と大乗仏教;菩薩の平和思想;ブッダとイエス)
3(本願力ということ;親鸞の仏陀観;親鸞における信心の深化)
4(マングース物語;人と猿と神;仏教における非神話化 ほか)
著者等紹介
梶山雄一[カジヤマユウイチ]
1925年、静岡市生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。専攻は仏教学。京都大学教授、佛教大学教授のほか、ハーバード大学、ウイーン大学などで客員教授を務め、2004年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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