内容説明
アメリカを代表する女性作家イーディス・ウォートンによる、すべての「幽霊を感じる人」のための、珠玉のゴースト・ストーリーズ。静謐で優美な、そして恐怖を湛えた極上の世界。
著者等紹介
ウォートン,イーディス[ウォートン,イーディス][Wharton,Edith]
1862~1937。ニューヨークの富豪の家に生まれる。1905年、ニューヨークの上流社会を批判的に描いた『歓楽の家』がベストセラーとなる。21年『無垢の時代』でピュリッツァー賞受賞。『幽霊』はマーティン・スコセッシ監督で93年に『エイジ・オブ・イノセンス』として映画化された
薗田美和子[ソノダミワコ]
女子栄養大学教授。津田塾大学大学院博士課程単位取得退学
山田晴子[ヤマダハルコ]
元玉川大学教授。津田塾大学大学院単位取得退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
60
『ビロードの耳あて』が呼び水になり、再読。改めて読むと最初の4篇は登場人物にパターン(束縛的な夫、主人に従うしかなく、妻を追い詰める使用人たち、そんな環境下でも慰めを見出す妻)があることに気づく。「カーフォル」は怯えたような犬の様子でてっきり、幽霊は語り手かと思いきや・・・の幽霊譚から復讐譚へと遡る捻りの構成が巧い。犬の来歴を考慮するとそうなるのは必然だったのか。再読しても怖い「ジョーンズ氏」と、それでも主人(夫人)を守ろうとする忠義が齎したものが哀しい「小間使いを呼ぶベル」は対比している。2025/02/24
かりさ
55
ウォートンの美しく繊細な筆致、日常の中に潜む幽かな気配や息づかいを織り込む7篇の幽霊譚。恐怖を感じるというよりは、幽霊の気配を如何に感性を研ぎ澄ませて読み取るか、幻想の中の仄かな怪奇に寄り添い揺らめく心地良い読書。気配や息づかいから幽霊を感じとる、ゴースト・フィーラーであるウォートンの《『ゴースト』序文》がとても面白い。「超自然の話の語り手本人が大いに怖がれば、あの不可思議なものの存在を感じる感覚を読者に伝えることができる」…だから私も幽霊物語を心から感じ信じて愉しんで読むことを続けたい。2019/09/14
藤月はな(灯れ松明の火)
49
怪談のように忍び寄るような怖さとしっとりとした不思議を味わえるクラシカル・ゴースト・ストーリー。ヘンリー・ジェームズの某作品を思い起こさせる「ジョーンズ氏」が怖い・・・。個人的な白眉は「柘榴の種」。ギリシャ神話で冥府の王、ハデスに連れさらわれた地母神の娘が食べたとされる黄泉戸喫としてでもあり、また、鬼子母神が人間の子を食べる代わりに食したと言われる多産の象徴とされる柘榴。手紙は食べてしまった柘榴の象徴でもあったのだろうか・・・。2015/08/05
mii22.
44
装丁のイメージ通り、静謐で品があり、ひんやりと冷たい館にまつわる7つのゴーストストーリー。何処か儚げで美しい女性や孤独な老人は悲しい物語によく似合う。登場人物や舞台となる館の造形が素晴らしい。特に「ジョーンズ氏」「柘榴の種」はじわじわと怖さが押し寄せてくるようで引き込まれていった。2015/08/18
星落秋風五丈原
43
『柘榴の種』弁護士ケネスの二度目の妻シャーロットは新婚旅行から戻ると差出人が書かれていない夫あての手紙を見つける。その後も手紙は定期的に届けられるが…。この手紙の差出人が誰かは最後まで明かされない。『レベッカ』のように亡き前妻を示唆する描写もあるが、シャーロットの執拗な問いかけにも夫やその母親は口を割らないため、確実ではない。怪談といってもいろいろ好みもあろうが「怪談は雰囲気を楽しみたい派」ならば楽しめる。一方で「いくら怪談といえどもう少し詳しく説明が欲しい」という感想を抱く読者には物足りなく感じられる。2015/08/29
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