出版社内容情報
選考委員瞠目! 第19回小説現代長編新人賞受賞作
今村翔吾さん「執念の如き力を感じた」
塩田武士さん「朝宮さんの『業』に、私は期待している」
中島京子さん「チャレンジングな作品」
凪良ゆうさん「著者にしか書けない光と闇」
宮内悠介さん「シンプルに心を動かされた」
薬丸岳さん「一番に推した」
5人の納棺師たちは全力を尽くす。遺された人々が、最後に顔を見てお別れを言えるように。
「どんなに考えても、探しても、人が死んだ理由なんて絶対に見つからないんだよ」
納棺師、遺品整理士、生花装飾技能士……葬儀関係のプロ集団「株式会社C・F・C」。
とりわけ損傷の激しい遺体を専門に扱う「二課」は、無残な状態から生前の面影を復元するのがミッション。
事故、事件、自殺ーー二課には毎日のように遺体が運ばれてくる。入学式を明日に控え線路に正座していた少年、ゴミ屋敷で餓死した男性、幼い我が子を残して事故に遭った母親、飛び降りる瞬間を動画配信していた少女ーー
二課の納棺師たちはその手で、失われた生前のおもかげを復元していく。
愛する人が突然この世を去った時、どうすれば立ち上がれるのか。あの人はなぜ命を絶ったのか。遺された者はどう生きればいいのか。
それぞれに「喪失」を抱えた納棺師たちもまた、明日を生きる微かな光を見出していく。
【目次】
0 有明の月
1 朝未き
2 入相の鐘
3 宵の明星
4 東雲の空
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もぐもぐ
32
亡くなった方々に接する納棺師の仕事を通して、生きている人たちの想いを描いた作品。事故死や自殺などで損傷した遺体を復元し特殊メイクを施す特殊復元処置衛生課の人たち。みんな背負ったものがあり、この職場で働く理由があり、その人間ドラマに心惹かれました。このような仕事があることも知ることができて良かった。内容は重いものではあるけど、人に対する尊厳あふれる描き様が気持ちよかったです。デビュー作ということで次回作も楽しみ。 #NetGalleyJP2025/07/22
ぽてち
29
第19回小説現代長編新人賞受賞作にして朝宮さんのデビュー作。おそろしいほどの才能で、とてもデビュー作とは思えなかった。舞台となるのは特殊な葬祭業の会社。新卒で採用された東雲くんが配属されたのは納棺部二課(特殊復元処置衛生課)。事件や事故、自殺などで亡くなった遺体の復元処置を行っている部署だ。これまで“特殊清掃”を扱った本は何冊か読んだが、遺体のその後を扱ったものは初めてだった。納棺師を扱ったお仕事小説としても読み応えがあった。二課のメンバーもそれぞれに抱えるものがあり、人間ドラマとしての厚みを増していた。2025/06/30
よっち
25
納棺師、遺品整理士、生花装飾技能士といった葬儀関係のプロ集団、毎日のように遺体が運ばれてくる二課で働く5人の納棺師たちを描いたグリーフストーリー。入学式を明日に控え線路に正座していた少年、ゴミ屋敷で餓死した男性、幼い我が子を残して事故に遭った母親、飛び降りる瞬間を動画配信していた少女など、二課の納棺師たちがその手で失われた生前の面影を復元していくストーリーで、その過酷な仕事ぶりを描きながら、遺された人々の様々な想いとも向き合っていく中、納棺師たちもまたそれぞれの複雑な背景に向き合う真摯な姿が印象的でした。2025/07/17
akiᵕ̈
24
読み終わってみて、今まで以上に納棺師さんたちのお仕事の重みや、そこに生じる苦悩を感じた。入社しても2週間ともたない人が多い中、学歴の高い大学新卒の東雲が、特殊復元処理衛生課に籍を置く4人と共に、凄まじい亡くなり方をした人たちの納棺に向き合っていく。予期せぬ事態で亡くなる方や、自ら絶つ命の遺体の度合いは様々で、運ばれくる人たちの損傷度合いは文字で見ただけでも絶対ムリー!と叫びたくなる位に凄まじい。それをいかに復元し、ご遺族に喜んでもらえるか真摯な対応に頭が下がるが、そこに向き合う様々な人間模様にも胸を打つ。2025/07/19
keisuke
5
とても辛く、悲しく、優しい話、納棺師の会社で働く人たちの話。みんなそれぞれパーソナリティに関する事情を抱えてて、この仕事をしている。割合としては悲しい話が多いけど、それぞれ前に進んで終わっているから救われる。素晴らしい作品だと思う。選評意見どれも納得の作品。2025/07/16