出版社内容情報
大正15年(昭和元年)12月25日未明、東京・麹町の陸軍少佐・竹田耕三の元に、待望の長男が誕生した。〈志郎〉と名付けられた子供は、日本中が大正天皇崩御の悲しみに暮れる中で、一家の新たな希望となる。
同日、北陸・金沢では、矢野一家の親分・矢野辰一が、賭場での諍いの落とし前をつけに、敵対する一家に乗り込んだ。帰宅した辰一を待っていたのは、懇意の社長から預かっていた女工の出産と死だった。辰一は孤児を〈四郎〉と名付け、自分の手元で養育することに。
一方その頃、東京・神保町で進歩的な婦人雑誌「群青」の編集者として働く森村タキが、社会運動家との間に女子を出産。『人形の家』にあやかり〈ノラ〉と名付けたその子を、身勝手な父親から引き離し、女手一つで育てることを決意する。さらに同年の大晦日、野心を胸に中国・大連へわたった五十嵐譲二は、主宰するジャズ楽団の年越しパーティ中に妻から出産の報告を受ける。出生した男子を〈満〉と名付け、昭和元年最後の夜に最高の演奏をする。
昭和100年、戦後80年に生まれる、壮大な昭和史サーガ三部作。
第一部は、親世代の視点を中心に、大正天皇の崩御から太平洋戦争開戦までを描く。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむら
28
今年一番のお楽しみ奥田の昭和大河小説の第一部が出ました! 陸軍軍人(東京)、侠客(金沢).女性運動家(東京)、ジャズマン(大連)、ともに昭和元年に子どもが産まれた4名が激動の昭和を生き抜く波瀾万丈物語。第一部は大正天皇崩御の日から日米開戦まで600ページ!もうね、奥田好きと昭和史好きの方々にはこれはね、もう間違いなく面白いので安心してお買い求めください。損はさせーん!すぐ続き読みたいわー!秋まで待ち遠しい!2025/06/22
アイリーン子
8
6/16。1926年暮れ、昭和の始まりとともに四人の子がこの世に生を受けた。子のそれぞれの親である陸軍省軍務局少佐・竹田、金沢のヤクザ・矢野、東京の編集者・森村、大連のジャズマン・五十嵐──激動の時代の中で、全く関わりのなかった四人の運命が絡まりあってゆく「昭和百年」を三部に分けて描く大河小説の第一部。分厚さ(約600ページ)に慄いたがあっという間に引き込まれて夢中で読んだ。戦争へと向かう時代のうねりとそれに否応なく飲み込まれてゆく人々の姿に心のざわつきが止まらない。続編が待ち遠しくてもう…!【プルーフ】2025/04/30
koji
2
気合いの入った一作。奥田英朗にしては珍しく、巻末の参考文献の量が凄かった。昭和元年に生まれた四人を軸に、昭和を丸ごと振り返る。第3部まで予定していて、これが第1部で、第二次世界大戦に踏みこむまでを描いている。軍人、ヤクザ、女性革命家、ジャズ演奏者とそれぞれの立場で昭和が描かれて行く。奥田英朗は心理描写を丁寧に描く印象であったが、今作はそこは割とあっさり目であり、主役は個々人ではなくあくまで昭和全体であるように思えた。賛否はありそうだけど、テンポよく読めたので、膨大な情報に溢れている今作ではアリだと感じた。2025/06/25