出版社内容情報
この世界が、あなたにとって、ちょっとでも生きやすくなりますように。
自分自身を優しくいたわる「ヒント」がつまったエッセイ集。
大江健三郎、ハン・ガン、津村記久子、文月悠光、『ブルーロック』、『君と宇宙を歩くために』……文学研究者が出会った、人生に寄り添ってくれる「言葉」と「物語」。
「養生という言葉を私は自分自身の生を養うさまざまな物語とつなげて考えてきた。ちょこんと横に置いて、ヒントとなる物語。自分の感情を教えてくれたり、生きる力をくれるような表現。それらを養生する言葉として捉えてきた。養生する言葉は、生きるための知恵であり、私よりも先に生きてきた人たち、同時代に生きている人たちが重ねてきた、輝くような実践の集積である。」
装幀・装画:鈴木千佳子
内容説明
自分自身を優しくいたわる「ヒント」がつまったエッセイ。この世界が、あなたにとって、ちょっとでも生きやすくなりますように。大江健三郎、ハン・ガン、津村記久子、文月悠光、『ブルーロック』、『君と宇宙を歩くために』…文学研究者が出会った、人生に寄り添ってくれる「言葉」と「物語」。
目次
「私」の物語を探しに
トラウマとともに生きるということ
傷について語る言葉
人生の手引き書をつくる
あきらめという鎖をほどく方法
助けを求められる社会のために
自分を笑わない誰かと生きる
養生はいつも社会的なもの
災害と養生について
あなたの話が聴けたらうれしいです
変わってゆく私を受けとめる
アンラーンの練習
看護について学ぶ
他者の世界を聴く
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
163
心に聴こえる声は誰なのだろう。他者の心にも体にも危害を加えてはいけない、それなのに。トラウマ、見えない深い傷を付けられて、その重みに翼は自由を奪われる。性被害から生き延びるために文学は救いとなり、その事実を受け止める表現を教えてくれる。無理をせず自分の心が受け入れられるときに手当てして、自分との対話の中から発見をする。多くの傷を持つ者は、どの傷にやさしい言葉をかけてくれたのか分からなくなる。この荒れ狂う社会の中で、少しでも痛みが和らぎ、生きやすくなれるよう、養生する言葉が綴られている。苦しみから救われる。2025/01/26
もちこ
25
とても読むのに時間がかかってしまったけれど、読みきれて良かった。 ナイチンゲールの看護師としての心得、がん看護専門看護師の田村恵子さんの言葉が、特に胸に沁みた。 他者と接するように、自分に優しくすること。 自分の過ごしやすい環境を整えること。 言葉にすると簡単だけど、実践するとなると難しい。どうしても自分のことは後回しにして、家族のことを優先しがち。 でも、もうちょっと自分に優しくしてもいいかな、と思えた。2025/03/12
keisuke
6
ネットギャリー。タイトルの『養生』が、『治療』ではなく『養生』なのが適切な言葉の選択なんだと読んでよく分かった。辛い経験、世界や他者、自己との距離感や向き合い方で苦しい事が多かったらしい著者が、色々な本の言葉で救われて、養生してきた事を綴っている。読んでいて強く感じたのは「3月のライオン」にもあった、『ひとはこんなにも時が過ぎた後で 全く違う方向から嵐のように救われる事がある』ということ。2025/02/21
ワタ
5
「私はいつも死にたかった。だから、生きるために必要な言葉を探しつづけてきた。」という書き出しではじまるエッセイ集。自身のトラウマや生きづらさと向き合いながら、言葉や物語を通じて養生する方法を模索する過程が記されている。私自身、気になる言葉を見つけると忘れたくないから、メモをする習性があるのでよくわかる。紹介されている作品は、宮田尚子『傷を愛せるか』、津村記久子 『水車小屋のネネ』、文月悠光『パラレルワールドのようなもの』、施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』、中井久夫『執筆過程の生理学』など。2025/05/07
あさ
4
ふと目にとまって買ってしまった。当事者ではないのに感じるたしかな心の痛みに、読みながら涙が出てきた。はじめて出会った文体。はじめとおわりを意識しながら丁寧に進み、同時に読者の”ペース”も気にかけてくれている、みたいな。「養生すること」を中心に、文学と社会のつながりを無理なく理解することができる本でもある。2025/05/06