MORAL 善悪と道徳の人類史

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MORAL 善悪と道徳の人類史

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  • サイズ 46判/ページ数 432p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784065370599
  • NDC分類 150.2
  • Cコード C0098

出版社内容情報

人間は、どのようにしてモラルを持つようになったのだろう? 助け合うよう生まれついているはずなのに、今や普遍的なモラルなど失われたかのようだ。だが、人類が共有するモラルは存在する。モラルの起源が理解できれば、モラルの未来も見えてくる。
生物学的、文化的に社会が進化していく過程でモラルはどのように形成されたのか――哲学の専門知識とさまざまな研究データをもとに解明。現在の私たちのあり方を決定づけた進化の歴史が明らかになる。

狩猟時代から現代に至るまで、人間のモラルの基本は「個人の利益<共同体の利益」である。脆弱なホモサピエンスが生き延びるには、それは最良の手段だったからだ。5万年の歴史を通して、社会的構造の変化とその後の経済発展により、モラルはさまざまな変容を遂げてきたが、基本は今なお変わらない。
人間の善と悪はどのようにつくられてきたか? 歴史の流れを軸に、哲学、経済、生物学的な分析をもとに「モラルの変遷」を説明。

かつてない不平等と分断の時代、他者に限りなく不寛容で、モラルに反するものを厳しく罰し、個人主義が浸透しすぎた時代、どのように新たなモラルをつくるべきか? 
著者の結論は人間のモラルの基本に立ち戻ること。国・民族・宗教などを問わずに人類に共通する「個人の利益<共同体の利益」を新たなモラルにすべきだというものである

内容説明

石器時代の「集団で生きるためのルール」から現代の人種・ジェンダー・マイノリティ差別、言葉狩りやキャンセルカルチャーまで言及。共生のための「今と未来の課題」を明かす。行き過ぎた正義は「悪」になるのか?気鋭の哲学者が500万年にわたって「人類の善と悪」の変遷を追う!

目次

第1章 五〇〇万年―新しい系譜学
第2章 五〇万年―罪と罰
第3章 五万年―欠陥動物
第4章 五〇〇〇年―不平等の発明
第5章 五〇〇年―奇妙さの発見
第6章 五〇年―歴史の教訓
第7章 五年―非政治的考察

著者等紹介

ザウアー,ハンノ[ザウアー,ハンノ] [Sauer,Hanno]
1983年生まれ。オランダ・ユトレヒト大学哲学・宗教学部准教授。善と悪、モラルをテーマに数々の論文を発表しており、2019年には欧州研究会議から若手研究者向けの助成金を、2020年にはオランダ王立芸術科学アカデミーより有望な若手研究者に贈られるアーリーキャリアアワードを授与されている。ドイツ・デュッセルドルフ在住

長谷川圭[ハセガワケイ]
高知大学卒業。ドイツ・イエナ大学修士課程修了(ドイツ語・英語の文法理論を専攻)。同大学講師を経て、翻訳家および日本語教師として独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

117
カントは人間を「理性を授かった動物」と定義した。その理性で共通の利益を図る集団を形成し、集団を結束させる手段としてモラルや賞罰、不平等に格差などを生んだ。集団が大きく結束が固いほど利益も膨らむため、集団のリーダーは自分たちが善であり他者は悪だとの考えを広めた。このやり方を早めに習得した集団は先んじて発展し、遅れた集団は自分たちこそ正しいと主張して既得権益を奪おうとする。人類の歴史はこうした闘争の連続であり、そこに人種、宗教、言語が加わって道徳的価値観の優越を争うのだ。この果てしない祭りに終わりは来るのか。2025/02/06

クリママ

40
著者はドイツの哲学者。東アフリカで誕生した人類は、気候変動、食料の調達、猛獣からの危険回避などのため、集団生活を始めた。個人にとっては非協力的な態度が最善の選択であるにもかかわらず、集団で暮らすため協力し、それが道徳の基盤となった。先史時代の集団同士の出会いは、ほとんど暴力に発展すると記され、その原因を読めば納得せざるを得ないが、人類とはそういうものなのかと落胆する。集団を維持するための、懲罰、文化およびその違い、奴隷制度等支配と不平等、幸福度など、過去から現代へ多くの引用を用いながら解説される。後半は⇒2025/03/15

ta_chanko

24
西欧文明が世界を制した要因は、カトリック教会が伝統的な家族・親族関係を解体し、さらにプロテスタントの発生により個人主義的な価値観が広まったから。血縁関係にある家族・親族・部族しか信用できない社会から、他人であっても信用して生活や仕事を共有できる社会への移行が、より大きな人間集団での生活を可能にした。他人同士を結び付けるのは「我ら」という意識。風習・宗教・習慣・道徳などを共有する人間の輪が時代とともに大きく拡大し、現代にいたる。一方で、現代においても社会を「我ら」と「奴ら」分断させる言説が飛び交っている。2025/01/17

ダージリン

6
兎に角ものすごく面白かった。ヨーロッパ近代の考え方こそが特殊だという話は、何かとよく出てくるが、この本が紹介するヘンリックの説明がこれまで読んだ中で最もしっくりきた。WEIRDとされる西側先進国の「奇妙な人々」の文化は、元を辿るとカトリック教会が伝統的な家族構造を破壊し、社会を重視する態度と道徳的な意味での個人主義の成立を促した結果だとする。全般的に知的な文章でなかなかに刺激的。著者は1983年生まれとまだ若いが、今後フォローしていきたいと思わされた。2025/04/01

zunzun

5
哲学者ハンノ・ザウアー によって書かれた500年前の先史時代から現代の人類に至るまで、なぜ道徳を肝心なものとし、今に至るまでどのような道徳的言説が行われてきたのかを書いた本。基調は「進化心理学」をもとに説明していくが、自然主義的誤謬といわれたくないせいか、ところどころに人間は変わっていくことができ、人には残虐なだけでなく、叡智が宿っており、正しい方向へ進む能力があるという。この辺りは、フーコーが『知の考古学』の終盤で記した「人間の終わり」とは異なる方向がみられる。2024/12/04

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