出版社内容情報
少年時代に姉がストーカーに殺された男、潮崎。被害者家族によりそいすぎたため、心身を壊し、若くして亡くなってしまった警察官の父を持つ女性刑事の広中。潮崎に対して、一方的に憎しみをいただいている広中は、捜査一課にいきたいという夢があった。その夢がやっとかなう。しかし、捜査一課での相棒は、信じられないことに、潮崎だった――。
介護疲れによってひきおこされた犯罪、オレオレ詐欺に、ひきこもり。巨大団地で連鎖する事件は、やがて最悪の結末をむかえる――。先読み不能のストーリーテラーが用意した、極上の物語ラビリンス。そして最高のカタルシス! 「あなた」も刑事も気づかないうちに、事件はもう始まっていた――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
133
バディ物のミステリにも様々あるが、これほど相性の悪い過去持ちコンビも珍しい。しかも双方とも悪を憎んで刑事に徹する覚悟なので、口を開けば衝突を繰り返す。しかし結果として捜査のプロである2人が能力を高め合い、殺人事件の裏に隠された思いがけない動機と犯人をあぶり出していくプロセスが鮮やかだ。過去の北海道警シリーズでは犯罪設定や犯人の造形で物足りなさがあったが、今作は社会性と謎解きの両面で成功している。また陰惨な事件を描きながら、生きにくさを抱えて苦しむ関係者の復活劇が気持ちいい。この方向を進めば成功するだろう。2025/05/20
いつでも母さん
80
ちょっと長いかなぁ。でも、タイトルほど最悪感は感じなかった。ナイスバディで次もありそうな・・?怪しいと思った奴はやっぱりね(たまには私も)が、そっち絡みか(←どっち?)璃子ちゃんが可哀想。明石もちょっと気の毒だった。初めから不安だったひきこもりの大地が、逞しくなって本当に良かったと思った。なんだか淡々とそんな感じ。おっと、長田くん、ガンバレ~!やっぱりちょっと長いわ。2025/05/30
のぶ
57
初めて読む作家さんでした。期待して読んだけれど正直がっかりでした。興味深い要素はたくさんあるのに、話を広げすぎているのと、登場人物が多くて混乱することが多く、章立てが大きいので、話が続いているのか、回想しているのか、分かりづらかったし、バディも今ひとつ魅力的に思えなかった。ラストの回収も物足りなく感じた。次作を読むかどうかは疑問です。2025/05/27
fuku3
26
2025.5.10読了。伏尾氏の待望の3作目。待った甲斐が有りました!警察庁捜査一課のバディ物。潮崎格は姉がストーカーに依り殺された被害者遺族。広中承子は父親が被害者遺族を支援した刑事。広中は潮崎の遺族に深入りし過ぎて病死した為、潮崎を快く思っていない。そんな二人が被害者遺族のガワに立ち、広中の元の花園署の大規模団地を舞台に様々な事件の真相を解明する。ハッキリと区別はないが、幾つかの連作短篇の構成になっている。シングルマザーの変死事件の真相には驚いた😱元夫のDV野郎、娘の璃子ちゃんが気の毒過ぎる!2025/05/10
練りようかん
19
たまプラを想起させる巨大な団地群が舞台。物語は交番からはじまり、のちに全ての警察の仕事の基本が交番勤務だと述べていて直近で読んだ松嶋作品とリンクして面白い。主人公が入る新部署は警察の実験研究とも言え、その位置づけに伏尾さんらしさを感じた。次々と事件に取り掛かり被害者家族心理、責任の所在と罪悪感、理屈ではない感情の動きを追いながら、主人公と相棒の間にあった過去と今なお日常に影響を受ける相棒の心が気になる展開。脇役まで輪郭がはっきりする造形が、真相を通すともやっとしてみえるコントラストが良かった。2025/05/28