出版社内容情報
狂乱と退廃、新進気鋭の才気があふれ出した時代、製作者たちが名作たちの知られざるエピソードをはじめて語りつくした!
草刈正雄、松田優作、大谷直子や畑中葉子、吉川晃司、高倉健、内田裕也、伊丹十三、森田芳光ら、映画が激しくきらめいていた最後の時代の主役たちの裏側とは。
『復活の日』『ヨコハマBJブルース』『ダブルベッド』『お葬式』『家族ゲーム』『コミック雑誌なんかいらない』など、80年代の話題作を一手に手掛けた名プロデューサーがいた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
52
名プロデューサー岡田裕を基軸に彼が関わった80年代映画のを特徴づけた映画とその周辺(人物含む)を記す本。いみじくも邦画斜陽期から生き残りを賭けて様々な手法を取りつつ今日の復活を果たすまでの概論ともなり、岡田の伝記ともなっている。80年に大学を卒業した私は当にこの斜陽期から現在までを追いつつ、本作で紹介される殆どの映画を劇場で観ることができた映画ファンだった。ロマンポルノから暴力、SFなんでもありだがあの頃場末で見た映画にこんな映画史的意味があったとは知らなかった。映画ファン、時代を知りたい者に貴重な一冊。2024/07/31
ぐうぐう
35
八〇年代の日本映画を振り返るにあたって伊藤彰彦は、プロデューサー・岡田裕の目を通して語ることを選択する。なるほど、『家族ゲーム』で森田芳光を世界へ紹介し、伊丹十三を『お葬式』で映画監督として花開かせ、アルゴ・プロジェクトを立ち上げつつも、『復活の日』や『南極物語』に『天と地と』といった大作も手掛ける岡田は、八〇年代の日本映画界がいかに活気に満ちていたかを体現する人物として打って付けだ。的確な嗅覚と執拗な粘り、そして何より映画への熱い想いが岡田を次々と成功へ導いていく。(つづく)2024/06/03
kei-zu
23
80年代、日本映画は刺激に満ちていた。本書で紹介される岡田裕プロデューサーの活躍は、当時の熱気を伝える。カリスマ性に満ちた松田優作や内田裕也の話題が楽しいほか、角川映画「復活の日」では、潜水艦シーンのために南米の独裁政権に交渉し、深作欣二監督はハリウッド俳優に駄目だししたなど、初めて聞く話も多い。2024/05/26
山田太郎
21
音楽とか読書はずっと趣味にしてきましたが、映画はあんまり観てないなと思いつつ読む。映画観るより、映画監督とか俳優とか映画会社の社長の方が人格破綻してるというか変わり者多くてそっちの方が面白い気がする。映画のためなら潜水艦借りてくるのもすごいもんだと。日活ロマンポルノ面白そうだから見たい気がするが、高校生の娘がいる状況では鑑賞環境の構築が問題ではある。2025/05/22
hitotak
16
主に80年代に活躍した映画プロデューサーである岡田裕氏へのインタビューを軸にまとめられた、80年代日本映画史。政策委員会方式・メディアミックス型の大作映画製作が主流になる以前のATG映画、伊丹十三作品、にっかつロマンポルノなどの製作裏話が次々に語られて面白かった。『家族ゲーム』で松田優作が演じた家庭教師役は桑田佳祐を想定して脚本が書かれ、実際オファーもしていたというのは驚いた。諸事情あって断られた経緯も書かれているが、桑田が演じていたらどんな作品になっていただろうか。内田裕也の破天荒ぶりも詳しい。2024/09/15