出版社内容情報
江戸川乱歩と横溝正史。現実に師弟関係にあった二人が挑む不可能事件。
首なし死体と生首が次元を揺蕩い、うつし世と夢は混線し……。
ミステリー界の巨人たちが、悩み、もがき、執筆し、謎について語り、あげく事件の泥沼に巻き込まれる。
あり得ない事件、受け容れ難き怪奇幻想。時空を越える乱歩と正史の推理は、現代の私達をも浸食する。
二人の蜜月を蘇生させるという大胆不敵な試みに、完璧に翻弄された。―ミステリー作家 斜線堂有紀
悪魔的な発想で紡ぎ上げられた小説の混沌に身を委ねる愉悦と、その混沌に理知の光が差す瞬間の恍惚を堪能した。
ーミステリー評論家 村上貴史
内容説明
江戸川乱歩、横溝正史。ミステリー界の巨星、二人が挑む不可能事件!
著者等紹介
長江俊和[ナガエトシカズ]
1966年、大阪府生まれ。映像作家・小説家。テレビの深夜番組「放送禁止」シリーズを制作し、熱狂的なファンを生む。さらに、監督として映画化。2014年、小説『出版禁止』を上梓して、話題になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
118
シンプルな一冊。現実にもとても濃密な関係があったらしい江戸川乱歩と横溝正史。この二人が長江さんの手によって現代に活き活きと蘇った作品。首なし事件に挑む乱歩と横溝。一方、生首を拾った男が彷徨う夢か現かの不思議な時間。事件の真相はもちろん、生首は果たして時空を超えたのか、なかなか面白いストーリー展開。乱歩たち二人の切磋琢磨のような関係が読み応えがあった。横溝のいっぱしの探偵作家に導いてくれた乱歩への思いにはじーんときた。細々とした仕掛けなしに至ってシンプルに楽しめる幻想ミステリ。長江さんって生首が好きなのね。2024/05/12
昼寝ねこ
117
江戸川乱歩と横溝正史が猟奇事件に関わるストーリーはとても魅力的だと思った。首なし全裸死体の生首だけが時空を超えて現代に出現するという過去と未来が交錯するSF仕立てになっている。前半の展開は多少まだるっこしいが作中に出てくる正史の手記で乱歩と正史の関係性がわかるのが興味深い(本書はフィクションだがかなり史実を踏まえている)。後半からの展開(解決編?)では意外な事実が明かされ、生首が時空を超えた謎も解ける。前半に伏線があったのに見逃していた。推理小説としては微妙だが乱歩と正史の世界に浸れて楽しかった。 2025/07/22
オフィーリア
70
猟奇殺人事件に巻き込まれた江戸川乱歩と横溝正史。日本ミステリ史に燦然と輝く巨匠二人の創作への苦悩、お互いへの激重感情を評論的に描写しながら猟奇事件を追うという探偵小説好き垂涎の設定。欲を言えばミステリ部分がもう少し濃ければ...。2024/05/15
オーウェン
66
監禁された青年の鞄に入っていたのは探偵小説の原稿と、美女の生首。 その原稿の中身は江戸川乱歩と横溝正史が巻き込まれた猟奇事件だった。 一体この生首は誰なのか。 また乱歩と正史の事件の犯人とは。 お互いの推理大家の作品がこれでもかと出てくる。 その中で休載しただとか、2人の友情を描いていき、最後には犯人明かしを。 序盤から匂わせていた部分が、犯人の動機となることには気づかなかった。 そして生首の存在が分かるとき、もう一つの謎もキレイに明かされる。2024/06/29
いたろう
61
江戸川乱歩と横溝正史が、謎解きをする推理小説、いや、ここは探偵小説と言うべきか、そういう設定というだけで、もうワクワクしてくる。しかも、乱歩や正史の小説ばりの、凄惨な「首のない死体」という「本格もの」殺人事件の謎解きであり、作中で、正史自身が、探偵小説では、首のない死体のトリックは、十中八九、被害者と犯人が入れ替わっていると説くが、果たして今回はどうなのか、興趣が尽きない。そして、乱歩・正史の物語と交互に出てくる「現代パート」が、もう一つの謎解きとして、この小説を重層的なミステリに仕立てているのがうまい。2024/06/13