出版社内容情報
コロナ禍中の日々を映す4つのストーリー。
芥川賞作家・上田岳弘、初めての短篇集。川端康成文学賞受賞作「旅のない」収録!
【収録作品】
「悪口」
恋人と過ごすホテルでのゴールデンウィーク。「じゃあ、悪口の練習しよっか?」。僕は初めて彼女と会った時のことを思い出す。
「つくつく法師」
朝の散歩は4歳の息子との日課だ。午後、僕は古いPCで、昔書いた小説を読み返す。
「ボーイズ」
10歳と6歳のボーイズは、亀甲柄と市松模様のマスクでやって来た。弟の息子たちを預かることになった夫婦の夏。
「旅のない」
「作家さんなんですよね?」。出張先での車中、会話が途切れると取引先の村上さんが聞いてきた……。
内容説明
「作家さんなんですよね?」出張先の車中、取引先の男が聞いてきた。たしかに僕は、IT企業に勤める傍ら小説も書いている。学生時代に撮ったという未完の映画の話をはじめた男だが、次第に素性がわからなくなっていき…。川端康成文学賞受賞の表題作を含む、コロナ禍中の日々を映す4つのストーリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シキモリ
21
芥川賞受賞作「ニムロッド」が妙に私の琴線に触れた著者の初となる短編集。全編を通してコロナ禍真っ只中の日常が描かれているが、「鬼滅の刃」等の固有名詞が数多く登場するため、些か普遍性に欠ける作品ではある。私的には「悪口」で主人公が語る持論に(良くも悪くも)共感出来る部分はあるし、独身の身としては「ボーイズ」の主人公夫婦の言い分にも一理あると思え、僅かながらの高揚感と居心地の悪さが共存する何とも言い知れぬ読書体験となった。村上春樹氏の「ドライブ・マイ・カー」を想起させる表題作の寂寥的で妖しげな作り上がりが好み。2024/04/20
火星人碧
4
4短篇を収録。「悪口」「つくつく法師」はなかなか読み進めず。私小説なのだろうか。専門家の評価は高いようなので(受賞歴が多数ある)、つまらないのは読み手のせいでもあるのだろう。「ボーイズ」「旅のない」は理解しやすいのだが、感じるところがなかった。特に表題作は好きなタイプの話なのに、ぷつっと途切れて終わってしまうのが残念だった。2024/07/31
わし
2
果たして、僕は自信過剰なのだろうか? 自分ではよくわからない。単に適切に自分にできるだろうこと、できないだろうことを把握して、極力最低限の出力で人生を渡ってきたとは認識している。それがある人には自信過剰に映るし、ある人には諦念に満ちた生き方に映る。(「悪口」より) 人生は生活の集積である。だから自分の望んだ人生を歩むなら、生活のスタイルを決めればよい。生活スタイルの変更はそのまま人生の抜本的な変更を意味する。それがなつみと僕との人生と生活における基本的合意事項だ。(「ボーイズ」より)2024/05/18
アダイウトン
2
コロナ禍を題材とした短篇小説。 不思議な感覚になる小説だった。2024/06/02
Hironori Oda
1
過去に2作呼んだことのある作者による短編集。筆者の経験談?と感じさせる妙なリアリティと、非現実感が絶妙に混ざり合っていた。まさに純文学という感じの終わり方も心地よい。 次はキューを読んでみたい。2024/11/09