出版社内容情報
\『この世の喜びよ』で芥川賞受賞、待望の受賞後第一作!/
その瞬間、語られないものたちがあふれ出す。
早朝のバス、公園の端の野鳥園、つきあってまもない恋人の家、島への修学旅行、バイト先の工場の作業部屋――。
誰もが抱える痛みや不満、不安、葛藤。
目に見えない心の内に触れたとき、「他人」という存在が、つながりたい「他者」に変容する。
待望の芥川受賞後第一作、心ふるわす傑作小説集。
「共に明るい」
早朝のバス、女は過去を語り出す。
「野鳥園」
産後の母親と少年が過ごす、仮初のひととき。
「素晴らしく幸福で豊かな」
出会って一ヵ月、恋人と過ごす不安定な日常。
「風雨」
台風で足止めをくらった修学旅行生たちの三日間。
「池の中の」
電池の検品バイトでの会話、起こる揺れ。
内容説明
心ふるわす傑作小説集。
著者等紹介
井戸川射子[イドガワイコ]
1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行。’19年、同詩集にて第24回中原中也賞を受賞。’21年に小説集『ここはとても速い川』で第43回野間文芸新人賞を、’22年に『この世の喜びよ』で第168回芥川龍之介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
246
芥川賞作家、井戸川射子さんの第2作で全5編を収録した短編集です。本作に出て来る人々は、とにかく迷いがなく早口でやたら長文を話して人に対し自分の腹の内をさらけ出し強く生きていける性格の方々ばかりだと思いますね。独特の文体にはとまどいも覚えますが徐々に慣れてくるとリズムが心地よく感じられてきますね。「素晴らしく幸福で豊かな」マッチングアプリで知り合った彼のペットのヤモリの仲間レオパを飼育しながら彼が複数の女と関係する女たらしと判っても気にせず関係を続ける女の話。「風雨」高校の修学旅行で長崎に来た生徒と教師達。2023/11/23
starbro
168
井戸川 射子、芥川賞受賞作に続いて受賞後第一作、2作目です。「共に明るい」は自虐的テーマのような気がする短編集でした。オススメは、「素晴らしく幸福で豊かな」です。 いずれにしても芥川賞受賞作同様あまり売れない気がします。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003825592023/12/07
青乃108号
152
特に何事も起こらない、ただその特殊な文体だけを味わうその時間を貴重に感じるこの師走の慌ただしさの中で。彼は思う、この本を読んで記憶に刻む人が果たして何人いるのかと。消費される、ただ読んだ、と言わしめる為だけに存在するかのような短編群。彼はひととき忘れる、今日1日の労働の意味を。ただ日常的些事を忘れる為だけに読んだ本は読み終えてしまえば特に感慨を残すものではない、ただ消費されて。忘れ去られて。彼はまた思いだす、明日の労働のいちいちを。いつまでも続く労働を。そしてふと気付く、いつの間にかクリスマスイヴだと。 2024/12/24
さてさて
130
『座席は通路を挟み二列ずつ、路線バスっぽくない、小学校の遠足のバスみたい、補助席もついてと初めて乗った誰かが思った』。『誰か』という視点でバス車内の様子を描写していく表題作〈共に明るい〉を含めた五つの短編が収録されたこの作品。そこには”芥川賞受賞後第一作”となる今の井戸川さんの作風を見ることができました。さりげない一節の中に芥川賞作家さんらしい表現を見るこの作品。一見、平易に見せつつも全体として難解さを併せ持つこの作品。まだまだ読書歴が浅いことを実感させられた、間違いなく難解!と思えた、そんな作品でした。2024/06/29
シナモン
115
切り取られた人生の断片に、わかる〜ってとこもあるけど、ふわふわしててどこか掴みどころがない感じも。それがまた癖になりそうな予感。「この世の喜びよ」よりは読みやすかった。今後も追いかけたい作家さん。2023/11/24