出版社内容情報
安政7(1860)年、咸臨丸が浦賀港からサンフランシスコを目指して出航した。太平洋の長い航海では船室から一向に出てこようとしない艦長・勝海舟を尻目に、アメリカ人相手に互角の算術・測量術を披露。さらに、着港後、逗留中のアメリカでは、放埒な福沢諭吉を窘めながら、日本の行く末を静かに見据える男の名は、小野友五郎。男は帰国後の動乱の中で公儀、そして日本の取るべき正しい針路を測り、奔走することになる―。知られざる幕末の英雄の物語!
内容説明
安政七年(1860年)。笠間藩士・小野友五郎はサンフランシスコを目指す咸臨丸の船上にあった。船酔いで船室に籠もる艦長・勝海舟を尻目に、その正確な測量術はアメリカ人船員を感嘆させる。帰国後、幕臣となった小野は、回天の動乱の中で公儀とこの国のために働き続ける。知られざる幕末の英雄を描く。
著者等紹介
今野敏[コンノビン]
1955年、北海道三笠市生まれ。上智大学在学中の’78年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。大学卒業後、レコード会社勤務を経て執筆に専念する。2006年、『隠蔽捜査』で第27回吉川英治文学新人賞、’08年、『果断 隠蔽捜査2』で第21回山本周五郎賞、第61回日本推理作家協会賞を受賞。’17年、「隠蔽捜査」シリーズで第2回吉川英治文庫賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
151
小野友五郎、幕末で活躍した幕臣。正直、知らなかった。算術に長けており、アメリカに行くため、咸臨丸に乗船した時は測量方に。その測量術は天才的。帰国後、蒸気船の製造に携わる。その後は、算術の才能を活かして勘定奉行など歴任し、地味ながら幕府を支える。どの任務も愚直に前に進む姿は尊敬に値する。表舞台では目立たなかったが、当時の幕府を陰で支える姿は、自分の理想であり見習いたい。晩年も算術だけではない類い希な才能を活かして活躍していて、晩年の彼の活躍を詳しく知りたかった。それが少し残念だけど面白かった。 2023/11/09
NAO
65
幕末太平洋を渡った咸臨丸は、単独の航海ではなく、アメリカのポーハタン号の随行船であり、助言役として咸臨丸に乗船したアメリカ士官や船員から航海術と測量術を学んでいた。物語は、咸臨丸の測量方兼運用方の小野友五郎の航海の日々と帰国後の活躍、そしてその後が描かれている。外国に負けない蒸気船を造ろうとの測量方の面々の気概を描く一方で、咸臨丸の艦長勝麟太郎と福沢諭吉を主人公たちとは対照的に描いている。福沢諭吉はそれほどでもないが、勝麟太郎に関してはぼろくそともいえる描かれ方で、それが新鮮でもあり、おもしろくもあった。2023/11/02
桜
49
おくちゃんさんの12月良本に誘われて後悔なしでした! 大政奉還前の日本。海外に弱腰な政府に対抗すべく維新志士達がいたと思っていたら、幕府にはこんな方がちゃんといたんじゃない! 自分のやるべき事をやれば、誰にも何にも恥じる事はない。今野さんが書いて活きるキャラだ! 立場が変われば見方も変わるもので、勝海舟やら福沢諭吉のダメっぷりも面白いw。 けど「もしも」があるのなら。彼が高杉晋作と会っていたら…。いや、変わらねぇかw2024/01/10
papako
46
うーん、ちょっと期待外れでした。始まりは今野さんらしいキャラ設定、天測という職人技にどう物語が膨らむんだろうと思いました。しかし史実をなぞるだけのあまり抑揚のないお話でした。もっと歴史を知っていたら楽しめたのかも。2024/01/16
ひさか
31
小説現代 2020年11月号一挙掲載のものを2020年12月講談社刊。細谷正充さんの解説を加えて2023年9月講談社文庫化。幕末に活躍した小野友五郎を描く長編時代小説。友五郎は、計算大好きの合理主義者で、たいへんに有能で面白い。登場する勝海舟や福沢諭吉の困った人ぶりも興味深く楽しい。友五郎の活躍は痛快で、拍手喝采を送りたい。細谷さんの解説に今野さんがワンフェスにガレージキットを出品した話があったが、これもまた興味深い。2023/10/20