出版社内容情報
老小説家の父親の出生地、岐阜県各務原市での講演という体で小説は書き始められる。その講演では岐阜近辺出身の文人が次々に召喚され、文化的磁場としての岐阜について語られるかと思いきや、認知症が進行していく妻とのやり取りの場面が挿入される。老小説家が関心を持って接してきた遠い過去からごく最近までの文学者たちの言葉と、日常生活を営むことが困難になりつつある妻の言葉が折り重なるように記されつづけたその奥からぼんやりと見えてくるのは、齢八十代半ばに至り健康体とはいえない老小説家が、どうしようもなく疲労しつつも生きて書くことの闘いをやめようとしない姿である。
内容説明
妻の認知症発症がもたらす困惑と生活上の困難を契機に自分たち夫妻の若き時期を辿り直そうとする「各務原」。サローヤンやアイザック・シンガーといった作家を媒介として、小説表現についての考察を深めてゆく「名古屋」。若い作家との交流による刺戟を取り込みながら、生活と創作が混在する老作家のリアルを描き出した「国立」。その生涯にわたり追求し実践してきた文学の広がりと深淵。
著者等紹介
小島信夫[コジマノブオ]
1915・2・28~2006・10・26。小説家。岐阜県生まれ。1941年、東京帝国大学文学部英文科卒業。第二次世界大戦中に召集され中国にて従軍するが敗戦後の1946年に復員し、新制高校などでの勤務を経て1954年から1985年の定年まで明治大学で教鞭を執る。文壇に出てからは安岡章太郎、吉行淳之介、遠藤周作、庄野潤三らとともに「第三の新人」と呼ばれた。1955年「アメリカン・スクール」で芥川賞、1966年『抱擁家族』で谷崎賞、1982年『別れる理由』で野間文芸賞、1998年『うるわしき日々』で読売文学賞など、数多くの文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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