内容説明
神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。五十歳を前に妻に先立たれ、俊才の誉れ高く、郡方本役に就いた息子を事故で失ってしまう。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかし藩の政争の嵐が、倹しく老いてゆく庄左衛門を襲う。文学各賞を受賞した珠玉の時代小説。第9回野村胡堂文学賞/第11回「本屋が選ぶ時代小説大賞」/第15回舟橋聖一文学賞/「本の雑誌」2021年上半期ベスト10第1位。
著者等紹介
砂原浩太朗[スナハラコウタロウ]
1969年生まれ。兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集・校正者となる。2016年「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞。2021年『高瀬庄左衛門御留書』(本作)で第34回山本周五郎賞と第165回直木賞の候補となり話題に。同作で第9回野村胡堂文学賞、第15回舟橋聖一文学賞、第11回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞、「本の雑誌」2021年上半期ベスト10第1位に選出された。2022年『黛家の兄弟』(講談社)で第35回山本周五郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
161
読み友さん皆が高評価の砂原作家の「神山藩シリーズ」の第一弾!今頃だが読了した。なんだろう・・この満ち足りた読後感は。冒頭から息子を失い、静かに老いていくはずの庄左衛門。既に妻は亡く実家に戻った息子の嫁・志穂と、絵を描くことで倹しいながらも日々を送る身なのだが、図らずも藩の政争に巻き込まれて行くのだ。どんどんと庄左衛門の人柄に引き込まれて行くのが心地よく、事態の進展も実に良く練られていてページを捲る手が止まらない。畳みかけるような伏線回収はお見事で、切なさもふんだんに散りばめられているのが堪らなく好みだ。2024/05/15
ふじさん
100
神山藩で郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前に、妻を亡くし、更に俊才の誉れ高く、郡方本役に就いた息子を事故で失う。残された嫁の志穂と共に、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨に中に生きていた。ゆっくりと倹しく老いてゆく庄左衛門を藩の抗争の嵐が襲う。架空の藩を舞台にすることや扱う主題の面でも、私の大好きな藤沢周平や葉室麟を彷彿とさせる作品。人物の設定や人々の絡み合い巧みさ、謎解きの楽しさ等、時代小説の面白さが味わえる作品。今後の活躍が楽しみだし、市井物も是非書いてほしい。楽しみな作家の出現は嬉しい。 2023/07/10
Willie the Wildcat
65
公私に渡る転機。関係性の齎す因果。否応なしに迫られる「動」の中、一呼吸置く「静」である”筆”。ヒトと季節の変化が、もう1つの動静。積み上げた1つ1つの人間関係や事象に、正面から向かい合うことで再「生」。まず弦之助と番傘。分かっていてもグッとくる。次に挙げたいのが、聴取の去り際の監物の言葉。藩と兄弟、公私に渡る再生也。なお、同場面の定岡市兵衛の言付けも粋。一方、慎造との決着は、主人公の再生の最後のピースだが、義と理の矛盾が滲む。なお士道不覚悟は、どうにも『局中法度』が頭に浮かぶ。2024/06/08
紫綺
62
単行本にて読了。しんしんと降り積もる雪のように淡々と、しかし心には温かく降り積もる時代長編だった。季節や自然の緻密な描写もさることながら、心情の描写も痛いほどに伝わる傑作!2023/09/24
シャコタンブルー
61
最近は嫌なニュースばかりだ。世界史上稀な性犯罪、権力による殺人事件調査の揉み消し、その大事件を忖度して報道しない大手マスコミには嫌悪しかない。だからこそこういう美しい物語を読みたかった。庄左衛門の潔い生き様に憧れる。不器用で実直で無口で。「選んだ以外の生き方があった、とは思わぬことだ」後悔先に立たず、どんな状況に置かれても淡々と今を懸命に生きる。目の前のことを一生懸命にする。それにより、いつの間にか道ができ前に進むことが出来る。白黒の墨の淡い絵だったが、最後はべろ藍により静寂さが増したように思えた。2023/08/25
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