出版社内容情報
水木 しげる[ミズキ シゲル]
著・文・その他
内容説明
太平洋戦争末期の南方戦線ニューブリテン島バイエン。米軍の猛攻で圧倒的劣勢の中、日本軍将校は玉砕を決断する。兵士五百人の運命は?著者自らの実体験を元に戦争の恐ろしさ、無意味さ、悲惨さを描いた傑作漫画。没後に発見された構想ノートを特別収録。作品に込められた魂の決意が心に響く新装完全版!
著者等紹介
水木しげる[ミズキシゲル]
1922年生まれ。鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、激戦地であるラバウルに出征。爆撃を受け左腕を失う。復員後紙芝居作家となりその後、漫画家に転向。1965年、別冊少年マガジンに発表した『テレビくん』で第6回講談社児童まんが賞を受賞。代表作に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』などがある。1989年『コミック昭和史』で第13回講談社漫画賞を受賞。1991年紫綬褒章、2003年旭日小綬章を受章。同年、境港市に水木しげる記念館が開館。2007年、仏版「のんのんばあとオレ」が仏アングレーム国際漫画祭最優秀賞を受賞。2009年、仏版「総員玉砕せよ!」が同漫画祭遺産賞を受賞。2010年、文化功労者顕彰。2015年11月、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamatoshiuruhashi
55
水木しげるの体験に基づくフィクション。とは言え9割方は事実だと言う。本書に出てくる下士官の中には「昭和史」のなかで戦後百貨店だか遊園地だかに勤め一緒に南方再訪を果たすことになる人だと思われる人物もいる。一コマ一コマに作者の執念が乗り移ったような作品。実は本作は出版当初からのあらゆる本を全て持っているが、講談社文庫の「新装完全版」ということで購入。どの本も処分しようとは思わず、全てを本棚に納めている。孫子に読ませるために。悲惨な作品。庶民として戦争に引っ張られたくはない。かと言って侵略されるのもごめんだ。2023/02/22
十川×三(とがわばつぞう)
53
90%事実。歴史的な価値が高い戦地記録。戦争の残酷さは文章より漫画の方が伝わりやすい。▼戦地で左腕を失い帰国。後に日本を代表する漫画家になる。体験した日々、空気感を漫画で伝える。これは奇跡的なこと。他国では皆無だろう。もし右腕を失っていたら存在しない作品。▼ビビビビッ。ビンタされた時の音。▼ワニに食べられた兵士もいた。2022/09/12
Shoji
32
絶句した。先の大戦において、戦地でワニに襲われて死んだ者、風土病に侵されて死んだ者、生魚を食べて喉に詰まらせ死んだ者らの描写があり、それらは「犬死に」だと書かれていた。別の場面では、敵に包囲され降伏を余儀なくされた時に「玉砕」の命令が下る。日本軍においては「玉砕」は「犬死に」ではないのだ。あくまで攻撃なのだ。お国のために死ぬことは名誉なことなのだ。トチ狂っているとしか言いようがない。何のために生きてきたんだ。水木しげるさんの魂の叫びが聞こえてくる一冊だった。2025/01/01
瀬谷
32
特に石山軍医が印象的なキャラクターだった。時代背景もあるが、潔く死ぬことが美談とされ、生き延びることが恥や裏切りのように扱われるのには共感できない。飢餓や病気、そして上官のメンツのために死へと向かわされる姿から命の軽さを、さらには話が終わった後のあとがきで何とも言えないやるせなさを感じた。2023/12/25
のぶのぶ
32
「軍隊というものがそもそも人類にとって最も病的な存在なのです。本来のあるべき人類の姿じゃないのです。」、実体験、実際に戦地に行き、片腕をなくし、生きて帰ってきたからこそ書ける漫画。決して、丈夫な兵隊でなく、あきらかに巻き込まれてしまったいち兵卒だからこそ、またリアル。一緒に軍隊に入らされた仲間が死んでいく。それも戦闘でなく命を落としていく。玉砕、それもちゃんと守る必要があり、そうならばまだ良いのだけれど、どうでもよいようなところで死ぬ納得できなさ。上等兵からの理不尽な暴力描写も悲しいもの。2022/08/09