出版社内容情報
中島 隆博[ナカジマ タカヒロ]
著・文・その他
内容説明
中国・日本はもちろん、欧米の『荘子』研究をも渉猟。自己および世界の変容を説く「物化」思想をその可能性の中心として取り出し、現代の西洋哲学と突き合わせることで、言語、道、他者、自由にかかわる荘子の思索を新たな相貌のもとに甦らせる。中国のみならず世界の哲学に通暁する著者がダイナミックに描く、新時代の標準たる驚くべき読解の書!
目次
第1部 書物の旅路 『荘子』古今東西(『荘子』の系譜学;中国思想史における『荘子』読解―近代以前;近代中国哲学と『荘子』―胡適と馮友蘭;欧米における『荘子』読解)
第2部 作品世界を読む 物化の核心をめぐって(『荘子』の言語思想―共鳴するオラリテ;道の聞き方―道は屎尿にあり;物化と斉同―世界そのものの変容;『荘子』と他者論―魚の楽しみの構造;鶏となって時を告げよ―束縛からの解放)
著者等紹介
中島隆博[ナカジマタカヒロ]
1964年、高知県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。博士(学術)。東京大学東洋文化研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
39
見たことの無い固有名が多く、難渋する。最後にドゥルーズの生成変化と接続される。西洋的な他者論ではない、「他なるものになる」という荘子の「物化」を他者との同一化でもなく、動物の擬人化でもなく、模倣することでもなく、同情でもない仕方で、全き現実性として思考するにはどうすればよいかというのが論点になっている。第Ⅰ部は『荘子』の学問的系譜を追っている。『荘子』をはじめとした中国哲学を現代的に考えることを意図しているようにみえる。途中で見失っても第Ⅱ部から読めば間に合うように書かれている。第Ⅱ部・第4章に『荘子』秋2022/11/10
ひよピパパ
17
これまでの『荘子』研究を概観した上で、『荘子』の哲学の神髄に迫った書。Ⅰ部では、古今東西の『荘子』研究の概略を紹介。中国の胡適や馮友蘭の『荘子』の捉え方が対照的だったことがビックリ。西洋の業績も多く紹介されていて勉強になった。Ⅱ部は筆者の『荘子』解釈。これまで「斉同」の考え方がクローズアップされがちだったが、実は「物化」の思想こそがその中心思想だったとし、現代西洋哲学とも付き合わせながら詳述されていく。いやしかしこの部分なかなか難渋。筆者の研ぎ澄まされたシャープな思考に付いていけず。2022/11/30
ゆうきなかもと
6
はい。早速再読しました。自分の中でしっくり来なかった物化、斉同問題は解決しました。自分の中で取りあえず腹落ちしましたね。正しい理解だといいのだが、自分が理解したのは、身近な他者への共感やなりきりで、人は自己を他者へと変容し、そして、そのあり方を肯定することによって、自己の世界を変容し、同時に、その他者も変容し、その世界も変容する。これが本書における物化。そして、自分と他者が区別された上で、自分から他者への変容が起こり得る流れを斉同と言っているのだと理解しました。2025/05/02
ゆうきなかもと
6
講談社学術文庫として出版されてすぐに買って、約3年ほど積読状態で放置していたのが本章である。4/29から4/30の旅路ならびに帰宅後のダラダラタイムで読了。読みどころは第Ⅱ部なのだが、個人的には第一章第二章はめちゃくちゃ腹落ちして、実践的にも尊いわーなんて思っていたのだが、第三章以降はなかなか苦戦。結局、中島先生の解釈する荘子の物化とは何なのか?斉同とは何なのか?しっくりきてない。改めて深く再読したい気になっている。2025/05/01
はるたろうQQ
3
30年以上前に岩波文庫の荘子全巻を揃えたが、積ん読状態。その解消の一歩として本書を繙く。本書で高く評価されてる福永光司の中公新書「荘子」も読んだはずだか、内容はまるで忘れている。「自己変容を伴った世界変容の哲学」という荘子読解に関する筆者の論理的説明の部分は十分には分からないが、引用された武満徹や桑子敏雄の文章、陳凱歌の映画の説明部分で何か腑に落ちる。修己治人の理解の鍵が出来たような気もする。これで哲学書として本書を読んだことになるのだろうか。荘子の読解として欧米のそれを紹介してるのが本書の特徴である。2024/01/30