出版社内容情報
渡辺 健一郎[ワタナベ ケンイチロウ]
著・文・その他
内容説明
「自由」は教えられるのか。参加者の「自主性」と「主体性」を引き出すとされるワークショップ。しかしそこでもある種の「権力」は生じうるのではないか。教師からも環境=アーキテクチャからも強制されない「真の自由」は可能か。プラトン、ランシエール、平田オリザ、國分功一郎、ハイデガー、ジャン=リュック・ナンシー、ラクー=ラバルトらのテクストを援用し、演劇、演劇教育から日常のコミュニケーションまで射程に入れた画期的自由論。第65回群像新人評論賞受賞作を大幅に加筆増補。
目次
第1章 演劇教育をめぐる自由と暴力
第2章 声と中動態―ランシエールの教育思想
第3章 俳優と上演―ラクー=ラバルトとジャン=リュック・ナンシー
第4章 上演の倫理
著者等紹介
渡辺健一郎[ワタナベケンイチロウ]
1987年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科表象・メディア論コース修了。小・中学生を対象にした演劇ワークショップにたずさわるなど、演劇や教育関係の活動を続けている。ロームシアター京都リサーチプログラム「子どもと舞台芸術」2019‐2020年度リサーチャー。2021年、「演劇教育の時代」で第65回群像新人評論賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buuupuuu
14
ランシエールの「不和」について触れた箇所がある。声が声として聞かれていないことが不和なのだという。合意を目指す話し合いが、互いに声を聞くことから始まるのだとすれば、不和は対立よりも根源的なものだということになる。ただ著者は、聞かれるべき本当の声(あるいは主体、ニーズ)というものが実体化されることについて否定的である。むしろまず不和があって、そこから新しい声への終わりなき探求が始まるのだと言うべきなのかもしれない。2022/10/07
Y.Yokota
7
難しいけど、めちゃめちゃ面白い!本文は150ページほどだけどもぎっしり読み応えある本で、久しぶりにドキドキした。内容を説明できる口を持ってないけど、教育とか「演劇」(日常的な意味も含めて)とか自由とか、自分の考えてた事のふた山ぐらい通り越した先を見せてくれたような感じ。話題をすごく絞っているのに、いろんな自分の経験に著者の話が結びついていく不思議。いや、それこそが哲学の良さなのか。2023/07/02
mstr_kk
5
演劇についての本質的な、本格的な論考で、めちゃくちゃ読みやすくわかりやすい(ラスト数ページを除いては)うえに刺激的です。急所ともいうべき問題にバシバシふれています。問題意識に強く共感します。演劇が抱える根源的なアポリア群を、よくまあここまで手際よく取り出せたものです。随所で取り上げられた問題に対して、それぞれ自分なりに考えていきたいと思います。そう思わせてもらえたことがとてもありがたいです。2022/12/27
msykst
4
面白かった。こういう本、もっと書かれて欲しい。2022/10/22
kentaro mori
3
演劇に関わっていて、稽古の度に役者たちの能力に感嘆し通しだった。本番はその一回性にあるが、稽古は無数の試行錯誤にあり、本番での姿しか知らない観客というのは一体どういう存在なのか、ということもまた。役者は稽古にこそ現れるのだと言えないだろうか。2023/02/28
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