出版社内容情報
秦 郁彦[ハタ イクヒコ]
著・文・その他
内容説明
明治以来の政治・経済を動かし、日本社会を創ってきたエリート官僚の実態を、自らも官僚体験のある現代史家が計量的に解明する。戦前の「革新官僚」には、戦後官僚社会であれば弾き出されるような個性的な人材も多かった。戦後は「天皇の官吏から公僕へ」「中央集権から地方分権へ」と改革が進むが、各省庁の「家風と作法」はしっかりと守られていく。
目次
第1章 戦前期官僚の計量分析
第2章 戦後期官僚の計量分析
第3章 明治の官員さんたち
第4章 日本の科挙・「高文」
第5章 革新官僚の群像
第6章 行政改革の季節
第7章 官僚養成所・東大の百年
第8章 現代官僚制の諸相
第9章 わが体験的官僚論
著者等紹介
秦郁彦[ハタイクヒコ]
1932年、山口県生まれ。東京大学法学部卒業。官僚として大蔵省、防衛庁などに勤務の後、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを歴任。専門は日本近現代史、軍事史。法学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲオルギオ・ハーン
29
取り扱っている範囲は明治から著者が現役で働いていた1970年代頃。明治を中心にした前半は日本官僚史として統計などの資料からどのように官僚機構が整備され、人材の供給のどんな変化があったのかも調べられていて大変興味深かった。日本で官僚制度を整備するには7世紀の律令制にまで遡ってベースにしつつ欧米の制度を取り入れ、各管轄の仕事を分けていくという大変なことだった。そもそも全国的に身分に関係なく試験をする制度自体が初めてで引継ぎ期間は幕府の実務担当をしていた人々を流用して間に合わせていたという。2022/06/20
まると
27
1983年刊。太平洋戦争期を中心に多くの著作をものしている現代史家らしく、統計的な計量分析を軸に中央官僚を精緻に分析している。マニアックな分析が終盤まで続くが、最終章「わが体験的官僚論」は20年間の官僚経験を基に様々なエピソードを交えて書かれており、面白かった。かつては「〇〇天皇」などと呼ばれた豪傑もいたというが、近年の政治主導と社会全般を反映して、官僚も今は小粒になってきたと実感する。「官僚は世界中どこでも給料を払う人のために働く本能がある」(アンドリュー・ロス)というのは名言。民間企業にも当てはまる。2022/06/11
CTC
12
83年刊。76年に大蔵省を参事官で退職した著者は、79年から2年かけて『戦前期日本官僚制の制度・組織・人事』をトヨタ財団の補助のもと編纂する。そこで各省庁に保管された重要官僚・高文合格者全員の略歴等を得て、戦後との比較考察や計量的アプローチができるようになった。本書はその副産物だ。統計等は82年頃のものが多く、例えば国家公務員上級職大卒初任給が10.69万円の頃のお話だから、現在までに諸々変化はあるだろうが…後の著者の仕事に共通する主観や解釈ではない客観公正の実像描写は今も充分に迫力を持って迫ってくる。2023/12/19
無重力蜜柑
11
面白かった。大日本帝国と戦後日本の官僚制について、定量的なデータをもとに色々な視点から分析を加えている。列伝風の語り口やブラックユーモアのおかげでスラスラ読めた。データの分析や革新官僚のあたりは史学的な内容だが、6〜9章は東大法→大蔵省の筆者の体験をもとに内側から書いている部分が多い。80年代の本なので当時の社会通念や感覚、常識を前提にしている記述が目立つが、それゆえに自分のような若者には歴史的な興味深い。また官僚制と日本株式会社全盛の時代の本だが、以降の停滞を予見するような記述が所々にあり驚く。2022/08/20
Ex libris 毒餃子
10
文科官僚の流れを汲む仕事をしているので、自分の仕事のルーツを知ることが出来て良かったです。特に栄典業務に関連する任官制度に関する記述が参考になりました。2023/09/23