出版社内容情報
シリーズの最初の巻「古代篇」では、〈世界史〉の中のミステリー中のミステリー、イエス・ キリストの殺害が、中心的な主題となる。もし、〈世界史〉の中で、われわれの現在に最も大きな影響を残した、たった一つの出来事を選ぶことが求められれば、誰もが、迷うことなく、イエス・キリストの十字架上の死を挙げることになるだろう。
どうして、イエス・キリストは殺されたのか? どうして、たった一人の男の死が、これほどまでに深く、広い帰結をもたらすことになったのか? われわれの現在を、社会学的な基礎において捉えるならば、それは「近代社会」として規定されることになる。近代化とは、細部を削ぎ落として言ってしまえば、西洋出自の概念や制度がグローバル・スタンダードになった時代である。その「西洋」の文明的なアイデンティティは、キリスト教にこそある。とすれば、キリストの死の残響は、二千年後の現在でも、まったく衰えることなく届いていることになる。キリストの死は、どうして、これほどの衝撃力をもったのだろうか?
イエス・キリストは、わけのわからない罪状によって処刑された。その死は、今日のわれわれのあり方を深く規定している。必ずしもクリスチャンではないものも含めて、その死の影響の下にある。どうしてこんなことになったのか?……
(「まえがき」より)
内容説明
近代化とは「西洋」出自の概念や制度、とりわけ資本主義が世界を制覇する過程である。その文明的アイデンティティはキリスト教にこそある。なぜイエスは殺されたのか?どうしてたった一人の男の死が、これほどまでに深く、広い帰結をもたらすことになったのか?著者のライフワークとしての強靭かつ執拗な思索は、この“世界史”上のミステリー中のミステリーから始まる。
目次
普遍性をめぐる問い
神=人の殺害
救済としての苦難
人の子は来たれり
悪魔としてのキリスト
ともにいて苦悩する神
これは悲劇か、喜劇か
もうひとつの刑死
民主主義の挫折と哲学の始まり
観の宗教
闘いとしての神
予言からパレーシアへ
調和の生と獣のごとき生
ホモ・サケルの二つの形象
著者等紹介
大澤真幸[オオサワマサチ]
1958・10・15~。社会学者。長野県松本市生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。社会学博士。千葉大学文学部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任。『ナショナリズムの由来』で毎日出版文化賞、『自由という牢獄 責任・公共性・資本主義』で河合隼雄学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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