出版社内容情報
野口 武彦[ノグチ タケヒコ]
著・文・その他
内容説明
文明とは、ある可能性の紛砕であり、開化とは、挫折した夢と怨みの上に咲いた花である。新時代の到来に必然はない。ありえたかもしれない未来と希望のもつれを解きほぐす、5つのネオフィクションの試みが見せる光景とは?
目次
崩し将棋
明治天皇の馭者
巷説銀座煉瓦街
陰刻銅版画師
粟田口の女
著者等紹介
野口武彦[ノグチタケヒコ]
1937年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。1973年、『谷崎潤一郎論』(中央公論社)で亀井勝一郎賞、1980年、『江戸の歴史家―歴史という名の毒』(ちくま学芸文庫)でサントリー学芸賞受賞。1986年、『「源氏物語」を江戸から読む』(講談社学術文庫)で芸術選奨文部大臣賞、1992年、『江戸の兵学思想』(中公文庫)で和辻哲郎文化賞、2003年、『幕末気分』(講談社文庫)で読売文学賞、2021年に兵庫県文化賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えも
24
明治維新前後の混乱、混沌の世相を描いたこの短編集の著者は、文芸評論家で大学教授。そのためか、小説のはずなのにやたら解説的で、かつ伏線が回収できてなかったりするため、小説世界にのめり込めない▼もう、なんとかしてください!2022/08/04
bvbo
1
初読み作家さん。明治の混乱期の色々。思ってたのと違ってた。 2024/08/15
妖湖
1
図書館本。小説は初読み。「伏魔殿」というのでもっとおどろおどろしい話かと思ったので、その点はちょっと意外。淡々と出来事を述べていくという感じで、やはりこの人の本業は評論家だなという感じがした。江戸から明治に代わる時代そのものが「伏魔殿」ということだった。まああれほどの変化が急激に起こればいろいろあるよね。「明治天皇の馭者」が一番好き。若き明治天皇の孤独が印象的。長松とお駒はその後どうなったのだろう。2022/06/01
好奇心
1
伏魔殿とは魔物の潜んでいる殿堂、みかけとは裏腹に蔭では陰謀悪事などが絶えず企まれている所、幕末から明治維新、近代国家の幕開け、文明開化のスタート、何が起こるか何が起こっても不思議でない明治初期が舞台である、千年の都 京都から天皇・公家・一部の商人が東京へ移り、京都は衰退した、五編の中で贋札事件の犯人?にされた熊坂長庵だったのか、藤田組・中野梧一・井上馨が黒幕だったのでは?国家的な匂いの感じる、もう一編 粟田口の女 松居浪江と嵐三十郎との関係でうすなさけのの言葉が艶っぽい毒婦夜嵐のお絹 原田きぬ 怖いですね2022/05/07
茶幸才斎
1
明治初年代の性急かつ激烈な近代国家造営のための石積普請。武骨な石材同士が噛み合う狭間を仔細に覗けば、ざわつく歴史の小断片が見えてくる。それは例えば、官軍の上野総攻撃の折に戦場に舞った悪童連の血飛沫、咄嗟のカンで御料馬車の馬首を返した梶原雄之助の鞭と手綱、井上馨が金策した銀座煉瓦街で編まれた服部撫松の『東京新誌』、藤田組贋札事件の犯人とされた熊坂長庵の手なる出来の不本意な弁天図、京都粟田口の刑場で慚死した士族の妻女松居浪江の残した飯粒。変化が早く見通しの利かない世の中で、国民はただ時流に呑まれ浮き沈みする。2022/04/19