出版社内容情報
砂原 浩太朗[スナハラ コウタロウ]
著・文・その他
内容説明
「―未熟は悪でござる」兄弟の誇りを守るため、少年は権力者になった。神山藩で代々筆頭家老の黛家。三男の新三郎は、兄たちとは付かず離れず、道場仲間の圭蔵と穏やかな青春の日々を過ごしていた。しかし人生の転機を迎え、大目付を務める黒沢家に婿入りし、政務を学び始める。そんな中、黛家の未来を揺るがす大事件が起こる。その理不尽な顛末に、三兄弟は翻弄されていく。時代小説の新潮流「神山藩シリーズ」第二弾!
著者等紹介
砂原浩太朗[スナハラコウタロウ]
1969年生まれ、兵庫県神戸市出身。早稲田大学第一文学部卒業。出版社勤務を経て、フリーのライター・編集・校正者に。2016年「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞。2021年『高瀬庄左衛門御留書』で第34回山本周五郎賞・第165回直木賞候補。また同作にて第9回野村胡堂文学賞・第15回舟橋聖一文学賞・第11回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞、「本の雑誌」2021年上半期ベスト10第1位に選出(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
269
砂原 浩太朗、3作目です。「神山藩シリーズ」第二弾ということで読みました。やはり渋い時代小説、黛三兄弟は女中好きですが、私もです(笑)著者には、葉室 麟の後継者になって欲しいと思います。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003596032022/02/24
パトラッシュ
217
物語は題名通り政争に巻き込まれ苦闘する黛家三兄弟のドラマだが、むしろ敵役である漆原内記の父親としての悲劇と読める。彼は強欲で無能な悪ではなく、財政困難な藩政を支える有能な為政者だが子を溺愛する父でもあった。それは美点ではあるが長男が無頼の徒とつるんで殺されると相手の壮十郎を死に追い詰め、出来の悪い次男を守るため孫を次代の藩主にと謀るほど狂気じみていた。しかし肝心の次男は己が父に及ばぬと悟り、父が見込んだ人材の新三郎を謀殺しようと暴走してしまう。黛兄弟に比べ子に恵まれなかったと思い知る最後は哀しさすら漂う。2022/02/21
KAZOO
166
山本周五郎あるいは藤沢周平の後継者ということで葉室麟さんに期待していたのですが、早逝されてしまい今後の時代小説がどのようになるのかと思っていました。この作者が突如登場されて私は3作目(この藩のシリーズでは2作目)ですが、もうすっかり虜になってしまいました。ここでは藩の家老の3人の息子が、それぞれの道を歩んでいきますが様々な事情もあり異なった方向に進んでいきます。13年後に藩での危機が生じて兄弟がお互いに力を合わせ、ということになります。4作目も読み始めます。2023/11/09
修一郎
144
前作同様佇まいが良く心地よい文章だ。家に縛られた不自由な運命でも己で人生を選び取って進む新三郎に諦観ともにある種の清々しさを感じる。ままならない環境の中で自分の生き方を定めようとする三兄弟の姿が潔い。跡継ぎ問題や権力争いに巻き込まれていく構成はいいとしてもサスペンスドラマばりに最初から全部仕組まれていて一気に御開陳という展開はいささか過剰感だ。伏線回収主義ありきでなくても良かったと思う。三作目もまた,幕藩体制の不自由な境遇での生き方を提示してくれるでしょう。楽しみにしています。2022/05/29
とろとろ
141
超マニアック神山藩シリーズ2冊目。前の「高瀬庄左衛門御留書」は郡方の小役人の話。今回は一転して筆頭家老と次席家老に大目付が絡んだ話。神山藩は支藩という設定だがそれでも10万石。とすると本藩は越中の○○藩を想定しているな。代々筆頭家老の黛家が次席家老の謀で一度は没落するが、残った兄弟が十数年かけて遂にその謀をひっくり返し、元の役目に復帰するまでの長い長い話だったけれど、二転三転する伏線がとても面白かった。この話、お家騒動や本家から監視の家老が派遣されたりするところは史実そっくりで、元ネタはこれなんだなと。2022/05/04