出版社内容情報
潮谷 験[シオタニ ケン]
著・文・その他
内容説明
202X年。新型コロナウイルスのせいで不利益を被った若者たちの間で自殺が急増する。自殺者の中には死ぬ前に自伝を国会図書館に納本するという手間をかけている者がいた。その数200人。共通するのは陰橋冬という自殺をした哲学者の最後の著書と自伝を模倣するということ。早世したベストセラー作家・雨宮桜倉を姉に持つ雨宮葉は、姉が生前陰橋と交流があり、社会状況の変化から遺作が自殺をする若者を肯定しているという受けとめられ方をしてしまったという思いから、自殺を阻止しようとするが…。「物語」の囚われ人の運命は―。
著者等紹介
潮谷験[シオタニケン]
1978年京都府生まれ。第63回メフィスト賞受賞。デビュー作『スイッチ 悪意の実験』が発売後即重版に。「王様のブランチ」(TBS)で特集されるなど話題になる。2作目の『時空犯』は、リアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10選定会議で1位に選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美紀ちゃん
85
笑顔で自殺?どういうことなのか?生命自律主義。コロナ禍で世界が変わった。若者が受けた影響は絶望するほど大きい。「物語論と生命自律」 自殺志願者の団体とお騒がせユーチューバー、生放送で自殺未遂。違法薬物「カクテル」他殺なのか?自殺なのか?ドキドキする。生きる希望は? この世界はあまりに忙しくて、忙しないけど、何も考えなくてもそれなりに暮らしていけるシステムも整いつつある。機械になって、歯車になって生きたらいい。それは悪いことではない。悩んだあげくに、命を絶つより数倍まし。ラストは光がさす内容。2022/05/05
雪紫
70
会議は踊る。されど進まず。コロナ禍の自殺と創作の姿勢という様々な考えが渦を巻く。このひと、わりと奇をてらった始まりをするけど(するすると読みやすい)王道ミステリや優しいひと達の話に収束していくよね。読むペースは止まらないけど事件よりは中盤の自殺肯定、否定論争が個人的に盛り上がった。今回のオバチャンポジションは久慈川さんだと思ったが亡きお姉さんだったようだ・・・。バンクシーは笑う。2022/07/19
さっちゃん
53
コロナ禍で疲弊した若者に自殺が急増した裏にはある本の影響が。自分の人生を物語とし、自伝を残して自死する「生命自律」と呼ばれる思想は果たして是か比か。/個人的には一作目より読みやすくなっていると思うし、今だからこそのテーマだとも思う。最終ページは作家としての願いが込められていて素直にジーンときた。まるでこれを書くための一冊のよう。ミステリ要素はあるけれどミステリとして読むには消化不良。難しくこねくり過ぎというか、謎解きに至る思考が私にはストンとこない(理解力不足なだけかな)。でも一つの物語として面白かった。2022/05/16
うまる
40
前2作と比べるとがっかり感が半端ない。討論会までは面白かったけど、後はうだうだ、エピソーグも蛇足感。死者の本は『戦う司書』ぽくて萌えたけども。姉の遺作の真意を守るのが主人公の行動原理ですが、そこがよくわからない。世間に遺作が問題視されている描写がないし、自殺肯定側からあなたのお姉さんも肯定派でしょ!みたいな指摘もないし。主人公の勝手な思い込みなのではと思ってしまいます。あと、リアルタイム配信の要素を入れているのに、視聴者の反響などが全然ないのもねぇ。登場人物達が考えるほど陰橋冬ってメジャーじゃないのでは。2022/07/22
のりすけ
39
自殺してもいいじゃん派と自殺アカン派の論争。この作家さんの本は全部読んでいる。どれも面白いんだけど浅い感。これはその中でも特に浅い感。自殺がダメとは言わないし、若い人は気の毒やなぁと思うけど、30億もあるんなら生きて世の中に貢献せぇや!とおばちゃんは思うの。そんなに生き急ぐんならみんな『オールド』の渓谷に行けばいい、天寿を全うできますで、すぐに。2022/07/05