出版社内容情報
五来 重[ゴライ シゲル]
著・文・その他
内容説明
「ハラキリ」や殉死など、武士道ばかりが日本人の死生観ではない。仏教伝来以前の霊魂観や他界観が息づく根源的な「庶民の死生観」を求めて、著者は旅を続けた。その視線は、各地に残る風葬や水葬の風習、恐山のイタコと北海道の円空仏、熊野の補陀落渡海、京都の御霊会、沖縄のイザイホウ、遠州大念仏、靖国神社などに注がれる。
目次
1(日本人の死生観)
2(日本人と死後の世界;みちのくの神秘・恐山―その歴史と円空仏 ほか)
3(怨霊と鎮魂)
4(死と信仰―補陀落渡海の謎;古来の葬送儀礼から見た現代の葬儀と葬具 ほか)
5(墓の話)
著者等紹介
五来重[ゴライシゲル]
1908‐1993。茨城県久慈町(現・日立市)生まれ。東京帝国大学印度哲学科、京都帝国大学史学科を卒業し、高野山大学教授、大谷大学教授を務めた。文学博士。専攻は仏教民俗学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
71
恐山やイタコ、補陀落渡海や墓の変遷を手掛かりに、日本人の死生観を考察した一冊。各章の発表時が主に七十年代という事で、一部やや古さを感じさせるものの語られている内容はどれも現在に通底するものばかり。むしろイエや血縁といったものの意義が薄れ、各個人の過去との繫がりが希薄になっている現在だからこそ読まれるべき本かも。個人的に面白かった部分はやはり補陀落や恐山だが、読まれるべきは日本人の来世観をまとめた「怨霊と鎮魂」や墓や葬儀の変遷を通じて日本人の死生観を綴る「墓の話」だと思う。一部情緒に流れているが面白かった。2022/01/15
南北
48
日本人は死ぬと怨霊になるというのが日本の庶民の死生観だと著者は主張する。このため死者を鎮魂する必要が出てくる。恐山のイタコや熊野の補陀落渡海、京都の御霊会などからそうした「日本人の死生観」を探ろうとしている。同じ著者の「仏教と民俗」でも出てきた話もいくつかあるが、山越阿弥陀に対する考え方など従来とは異なる見解を知ることができて興味深く読むことができた。2022/02/07
しょうゆ
7
死後の世界の考え方、葬儀や墓、恐山、補陀落渡海など興味深いことばかりでとても楽しく読めた。ちょっと同じ内容の繰り返しが多いかなと気になりましたが、それがかえってわかりやすさに繋がっていたと思います。思想が強めな部分はちょっと飛ばし読み気味になってしまったけど、全体的には勉強になることばかりでした。やはり宗教や死生観に関する本は面白い。2022/05/16
猫またぎ
6
また地元の話が出てきたが、地元の図書館が郷土資料的に選書したのかな。ちなみに文庫コーナーの開架。2023/07/18
フリウリ
3
行基が後世に最も大きな影響を与えたのは、庶民のために火葬を始め、墓を作ったことである、という指摘は興味深く、その他「なるほど」なことがたくさん書いてある。ただ、本書の多くは講演などの原稿起こしがもとになっているのだけど、五来重の「話のマクラ」は教条的ゆえに凡庸で、わりといい加減なことを言っている。例えば、日本人の霊魂観は仏教以前の古い霊魂観が残っているが、キリスト教国などでは古い宗教や霊魂観はほぼ撲滅されている、という指摘は、「金枝篇」を想起するだけでも、事実とはいえない。ファンとしては許すが、惜しい。72023/03/03