出版社内容情報
国家試験に合格し、視能訓練士の資格を手にしたにもかかわらず、野宮恭一の就職先は決まらなかった。
後がない状態で面接を受けたのは、北見眼科医院という街の小さな眼科医院。
人の良い院長に拾われた恭一は、凄腕の視能訓練士・広瀬真織、マッチョな男性看護師・剛田剣、カメラが趣味の女性看護師・丘本真衣らと、視機能を守るために働きはじめる。
精緻な機能を持つ「目」を巡る、心温まる連作短編集。
『線は、僕を描く』で第59回メフィスト賞を受賞しデビュー。
同作でブランチBOOK大賞2019受賞、2020年本屋大賞第3位に選出された作者のデビュー後第1作。
内容説明
街の眼科医院で働く新人視能訓練士、1年間の物語。
著者等紹介
砥上裕將[トガミヒロマサ]
1984年生まれ。福岡県出身。水墨画家。『線は、僕を描く』で第59回メフィスト賞を受賞しデビュー。同作でブランチBOOK大賞2019受賞。2020年本屋大賞第3位に選出された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
576
「線は、僕を描く」に続いて、砥上 裕將2作目です。 視能訓練士(本書で初めて知りましたが、訓練士と言うよりも検査技師の方が実態に近い気がします。)、お仕事成長譚の連作短編集の佳作でした。著者の専門分野ではないので、前作よりも作品として少し弱い気がします。 私は緑内障で3か月に一度通院しているので、患者の気持ちは良く解ります。10月は本書で読了です。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003546262021/10/31
kou
472
新人の視能訓練士の成長物語。どの話も心が温かくなる読後感だった。この本を読むと、目が見える事への感謝が沸いてくる。前作同様、表紙水墨画は著者が描いてるみたいだが・・・どの部分が水墨画なんだろうか?全部なのかな?この著者の次回作も楽しみでしかたない。2022/01/07
うっちー
395
私も眼科に定期的に検診しています。目はホントふしぎで緻密な臓器ということを実感しました2021/12/05
seacalf
367
通いたくなるような魅力的な喫茶店が登場する小説は大概面白いと思う。砥上裕將さんの作品はコミカライズ版だけしか読んでないが『線は、僕を描く』がとても良かったので今回も安心して読めた。本作は馴染みの薄い視能訓練士の話。主人公の野宮君に始めは物足りなさを感じるが、段々と彼の真摯な行動に触れるにつれ、いつしか気持ち良く物語に身を委ねていく。コンタクトの為に眼科に定期的に通うが、都内では北見眼科医院のようにじっくり患者に寄り添って検査や診察をしてくれるのは最早ファンタジーのような気がする。毎回長時間待たされるもの。2022/04/01
しんごろ
353
小さな街の眼科の視能訓練士である野宮恭一の成長物語。経験も浅く自信もなく不器用な野宮くん。素敵な医療スタッフに恵まれ、患者とちゃんと真摯に向き合い頑張る姿に応援したくなる。目が見えなくなるという不安は、きっと恐怖しかないだろう。いつか見えなくなる。そんな恐怖や不安を取り除いてくれるであろう視能訓練士の仕事の素晴らしさに、野宮くんには、誇りと自信を持ってほしい。目を大切にし、今見える一瞬を大事にしたい。暗く静かな森の中を歩いて、森を抜けたら光を感じるような読後感だった。2022/06/12