出版社内容情報
第64回群像新人文学賞受賞!
高2の夏、過去にとらわれた少年たちは、傷つき躊躇いながら未来へと手を伸ばす。清新な感覚で描く22歳のデビュー作。
日本一暑い街、熊谷で生まれ育ったぼくら4人は、中1のとき出会い、互いの過去を引き受け合った。4年後の夏、ひとつの死と暴力団の抗争をきっかけに、ぼくらの日々が動き始める――。孤独な紐帯で結ばれた少年たちの揺れ動く〈今〉をとらえた、新しい青春小説。
(群像新人文学賞選評より)
・〈文法の破綻した叫び〉こそが高二のぼくらのリアルな何事かを言語的に表現する、との説得力。――古川日出男氏
・私がいちばん感心したのは〈一人称内多元視点〉と呼ぶべき視点のつくり方だった。これは文学的に有意義な試みだと思う。――松浦理英子氏
内容説明
越えていけ、ぬるい絶望を。高2の夏、過去にとらわれた少年たちは、傷つき躊躇いながら未来へと手を伸ばす。清新な感覚で描く、22歳のデビュー作。第64回群像新人文学賞受賞作。
著者等紹介
島口大樹[シマグチダイキ]
1998年埼玉県上尾市生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。現在、会社員。2021年、「鳥がぼくらは祈り、」で第64回群像新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いっち
36
一回目に読んだときは、良さがわからなかった。二回目に読んでも、わからない部分があったが、面白さを感じる部分もあった。わからないのはタイトル「鳥がぼくらは祈り、」で、①祈ったのは鳥かぼくらか。②何を祈ったのか。③「、」に続くのは何か。面白かったのは、「ぼくら」の一人の父親が自殺したことで、もう一人のぼくら(過去に父親が自殺)が、昔を思い出して苦しまないかと、さらにもう一人のぼくらが気に病んでいる場面。仲の良い4人の登場人物だからこそ描ける。似たような境遇に立たされたぼくらだからこそ、描ける内容だと気づいた。2022/05/29
Shoji
35
主人公の青春時代の退廃的で暴力的な日々を、主人公自らが他人事のように語る内容です、たぶん。「たぶん」と言うのは、私の読解力の低さ所以です。物語は、暗くてじめじめしています。母親が風俗で働いてたり、父親が自殺したり、友達と危険な香りのする日々を過ごしたり。そんな物語がただ淡々と流れていきます。しかも、少々くどい言い回しで綴られています。でも私はこういう表現方法、不思議と好きだな。2021/10/25
uniemo
17
独特な文体の小説は好きなのですが、本作はかなり読みこなすのに苦労はしました。子供が作文に使用したら「てにをは」が違うよねと指導したくなる感じ。けれど、わかりにくいところはあっても鬱としているけれど、全体的には前に向かっていくような主人公たちの気持ちが、たたみかけるように描かれていて、小説の世界観に入ることはできました。2021/08/19
ホースケ
16
独特の文体、曖昧な人称によって、読みやすいとは言えないのに、何故か一連の出来事がリアリティを伴って迫ってくる為、読了後は一編の映画を見終わった気分になる。心に傷を抱えた4人の高校生の過去現在。その時間の描き方も行ったり来たりと、かなり自由なので時折置いてきぼりをくいそうにはなる。しかし後半、それぞれの父母との関係や、その過去と向き合う努力をしていく姿が健気で愛おしく、思わず落涙してしまった。最後の台詞、ぼくは何を言いたかったのか..。しばらく考えながら本を閉じたが、出た結論は著者の作品が好きだということだ2023/02/06
ヒマワリ
10
読むのに集中力が必要だった。抽象的なこと(記憶についてとか)を、独特の文体と語彙で表現し尽くそうとする熱量みたいなものを感じた。主人公が一番存在感がないことと、斬新な視点の作り方はこの小説特有の空気感を作っている気もするけど、良し悪しは私にはまだよくわからない。傷ついたもの同士で寄り添い合う焚き火は必要、でもいつまでも焚き火の側にはいられない。高島のファミレスの場面が良かった。終わり方も私は好きだった。祭りの雨のシーンはもう一回読みたい。2021/10/31