硝子戸のうちそと

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  • サイズ B6変判/ページ数 274p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784065235515
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

 夜中にふと目が覚めた。そんなことはこの夜に限ったことではない。若いころなら枕に頭をつけた途端に寝入って朝まで目覚めないのが当り前のことだった。今はそうはいかない。何度寝返りを打っても廊れないときは眠れない。そういう日は手洗いに行き、睡眠薬を服用してから寝床に戻る。そうして何とか朝方まで寝入る。目覚めた時間が六時、七時だと起きてしまう日もあれば、それから九時、十時までぐっすり睡る日もある。
 今夜は私一人である。隣りで寝息をたてたり寝返りを打つ音がまるで聞こえてこない。私は臆病だから私を取り巻く静寂な闇が、私を抑えつけて胸を圧し潰したりしないか、とビクビクしている。
 でもその夜は一人きりのわりには、不思議なほどこわくなかった。もう老人だものなぁ。私がお化けになって人に恐がられる日も間近いのかもしれない。そんなことを考えた。
 夫は今朝入院して、今はいないのである。……
 夫が救急車で入院するのもおそらく珍しいことではなくなって、その回数も増えていくであろう。私がその都度うろたえないように、あわてないように、と神様が私に練習の機会を今日は与えて下さったのであろうか。
 八十七歳と八十二歳の夫婦には、やがては無に帰する日が来るのであるが、その日が来るまで長く生きていくのは、それほど容易なことではない。試練はまだこれからか。とにかく年を取るということは、避けることができないだけに、大変な大仕事なのである。

年を重ねると同じものが別のように見え、かぎりなく愛しくなってくる。一族の歴史、近所のよしなしごと、仲間たち、そして夫との別れ。漱石の孫である著者によるエッセイ集。

内容説明

年を取るということは、避けることができないだけに、大変な大仕事なのである。一族の思い出、わが町わが友、そして夫との別れ…。

目次

漱石山房記念館
一族の周辺
硝子戸のうちそと
まちと仲間と
人みな逝く者
年を取るということ
夫を送る

著者等紹介

半藤末利子[ハンドウマリコ]
エッセイスト。1935(昭和10)年、作家の松岡譲と夏目漱石の長女筆子の四女として東京に生まれる。1944(昭和19)年、父の故郷である新潟県長岡市に疎開、高校卒業まで暮らした。早稲田大学芸術科、上智大学比較文化科卒業。夫は昭和史研究家の半藤一利。六十の手習いで文章を書きはじめる。夏目漱石生誕150年の2017(平成29)年、新宿区立漱石山房記念館名誉館長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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いつでも母さん

168
エッセイスト半藤末利子さん初読み。夏目漱石を祖父に半藤一利氏の妻でもある。祖父母の話から始まったが私は、後半の「人みな逝く者』『年を取るということ』『夫を送る』が目当て。86歳、かなり豪胆な方と感じた。「来世で又、ぴったり気の合う優しい人」と夫・半藤氏を語っていた。素敵なご夫婦だったのですね。2021/07/18

Willie the Wildcat

94
孫として、妻として、稀代の作家の日常に触れる。前者は祖父ではなく、祖母の泰然さが滲むエピソードが微笑ましい。特に次姉と叔母との「容姿論争」には微笑むしかない。次に後者からは、浅草今半から帰りの「タクシーでぼやき」。無論嫌みではなく、”素”なのがミソ。一方、著者の切り返しで挙げたいのが、「夫の好きなモノ」。対岸の火事ではないですね。向かうところ敵なしの感のある著者が”飲まれている鰻屋の店員の件は、違う意味で笑う。そして、迎えた最期で振り返る、夫が嗚咽で詫びた理由、グッとくる。最後の言葉、私も”一読”します。2022/05/12

クプクプ

75
著者の半藤末利子さんは作家の松岡譲と夏目漱石の長女筆子の四女として東京で生まれ、後に半藤一利と結婚しました。新宿区立漱石山房記念館の名誉館長をつとめているそうです。このエッセイで著者は記念館が出来る前の漱石公園に触れていますが、私も昔の漱石公園を訪れたことがあり懐かしく感じました。私は新しい記念館も訪れたことがあり、あの素晴らしい建物の外観も知っています。素人くさいエッセイですが、夫である半藤一利さんも愛情たっぷりに表現していて、漱石ファン必見の一冊です。私はこのエッセイを空気の澄んだ公園で読み満足でした2024/02/05

kaoru

74
漱石の孫半藤末利子さんの随筆集。新宿にオープンした漱石山房記念館、夏目一族のエピソード、ご近所やご家庭、年齢を重ねることについてなどさらりと読める内容。江戸っ子らしい毒舌が随所に顔を出すがこれは末利子さんの持ち味だ。最後に夫君である半藤一利氏のご闘病とご逝去が語られる。『戦士の遺書』『山本五十六』をお書きになっていた一利氏が夜にうなされたエピソードには驚いた。リハビリの描写は辛いが多くの方が通る道かもしれない。良い御夫婦であったことが文章から伺える。「良識ある日本人に戦争の恐ろしさを語り続けた」一利氏の→2023/11/20

しゃが

63
夫・半藤一利さんとの別れが語られているエッセイだったので手に取った。著者は漱石の孫でもあり、前半は夏目家のエピソード、近所のよしなしごとで退屈だったが、後半は骨折・介護・突然の別れは長年連れ添ったお二人の人柄が胸に迫った。著名人であって今の医療への虚しさ、やるせなさがあるのだと…。私の周りの高齢者も“骨折流行”、私も腰痛、身につまされた。 2021/10/21

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