出版社内容情報
奥野 修司[オクノ シュウジ]
著・文・その他
内容説明
震災後、30名を超える死者に憑かれた20代の女性―。その体験を、除霊した古刹の住職と彼女の証言から書き起こした、彷徨える魂の記録。
目次
第1部 予兆(「おにぎりが食べたい」と言った男子高校生の思い;下半身がない海軍軍人が守りたかった家族の未来;「除霊」の儀式はどう行われたのか;5歳の男の子の魂に感じた罪の意識)
第2部 乱入(「娘をさがしに行かせろ」と叫ぶ死者の慟哭;弟の手を離した少女の後悔;津波で家族を喪ったことに耐えられなかった男性の霊;津波から逃げ遅れた妊婦が伝えたかったこと;餓死した犬は最期に何を見たのか?)
第3部 祈り(愛する老妻を1人残して死んだおじいさんの心配;死にたくなかったと訴える大学生の苦悶;2人の子供を残して亡くなった母親の無念;福島原発で亡くなった男性が訴える家族への心残り;「父より先に死んだぼくは、地獄に落ちますか?」12歳の祈り)
著者等紹介
奥野修司[オクノシュウジ]
ノンフィクション作家。『ナツコ―沖縄密貿易の女王』で、講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
76
この本はホラー物ではない。ノンフィクションであり、実際に起きた事柄を書いたもの。幼い時から霊を見たり、感じたり、時には接触してしまう今回の語り手。上手くコントロール出来たいたのが東日本大震災を境にコントロール不能となってしまう。怪奇現象を扱っ番組や映画、読み物と違い恐怖は感じない。それよりも切なさや、憑依されていて辛いのにも関わらず罪悪感に苦しむ状態を知って驚きと共に悲しい気持ちになる。いるか、いないかよりも、その人を受け入れるという住職の懐の深さには感銘を受けた。2021/08/07
いっちゃん
30
リメンバーミーというディズニー映画が好きです。メキシコの死者の国の住人は思い出してくれる人がいなくなると塵になります。あの世とこの世を隔てる川の存在はいろんな国にあるようです。奥野さんが書かれているように、あの世なんてないという今の方が歴史的に短く、いろんな国に死後の世界というものを信じる文化があるなら、あるんだろうなぁと思うのが自然かもしれない。私はあると思いました。成仏しきれずにさまよってしまう魂もあるんだろうと。2022/10/12
びぃごろ
16
2022.1.7読了。データが消えていることに気付き再入力。精神的にも肉体的にもよく耐えたと思える話であった。Twitterより→ノンフィクション。幼い頃から死んでいる人も見えていたという高村さん。東日本大震災後、制御がきかないほど彼女の頭の中に声が響き、向こうの世界… 残念ここまで。2022/01/07
雪だるま
14
気がついたら読みながら涙が出ていて、自分で驚きました。 霊の存在や憑依、除霊などは信じない人には作り話の様に思えるのだと思います。だからこそ霊を感じる人はあまり公言しないのでしょう。本書で多くの霊に憑依された体験を語る高村さんも自分ではどうにもできなくなって初めて助けを求めています。興味本位の怪談ではなく事実として、生と死を考えさせられました。ノンフィクションですが、小説の様な感じで読みやすかったです。2021/08/29
ゴロチビ
10
前に読んだ「魂でもいいから、そばにいて」に連なる本かなと思って手に取る。幽霊話のようで全く違う、これもドキュメンタリーなのだ。霊を引き寄せる体質の女性が死者に憑依されて思いを語る…としか思えないのだが著者はあくまで客観的であろうとしている。何故死者の素性が分からないのか?意地の悪い見方をすれば疑問もある。純粋さ故の自己催眠とか…。それでも私は自分は中継器だという女性の感覚は納得できた。死者が残した思念を受け取って自分の出来る範囲で翻訳している?そんな感じ。いとうせいこう「想像ラジオ」のリアル版ではないか。2022/12/07