内容説明
自身の経験を元にした、著者の新たな代表作。思いもよらなかった“新生児仮死”。自分がもっと気を付けていれば…(『騒がしい場所』)。看護師として頼られる日々。でも我が子にとっては、どんな母親なのか(『働く場所』)。18トリソミーとして生まれた心。今はただ、ずっとずっと生きていてほしい(『願う場所』)。ほか、全7編。
著者等紹介
加藤千恵[カトウチエ]
1983年、北海道生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業。2001年、短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビュー。2009年、『ハニービターハニー』で小説家デビュー。その他、詩やエッセイなど様々な分野で活躍。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
208
【NICU】そこは命の現場。生きようと、生かそうと奮闘する姿が胸に迫る。お仕事小説でもあるが、そこにある人間模様。医師、看護師、臨床心理士、清掃員、そして産まれて間もない赤ちゃんと親。連作7話どれも切実でどれも愛しくて、どれも厳しくて優しい。決して長くはないのに読了に時間を要した。小さくても命は重く、「当たり前」の日々などない事を再確認させられる。心ちゃんの両親のあれからを知って正直ホッとした。佐藤看護師の息子と和久田臨床心理士の夫のその後が気になって仕方ない。2021/06/22
mariya926
164
NICUとは赤ちゃんの集中治療室。私も妊娠中の不安とか、胎便をしたので帝王切開になりそうになったこととか、思い出しました。元気に産まれてきてくれたのがキセキなんだよなーと、この様な本を読む度に感謝します。思わず寝ている息子の顔をなでなでしました。NICUに関わる7つの短編集。命を預かっているので、緊張感がありつつ、日常生活やその人の想いで溢れていました。読んでいて泣いてしまいました。それでも希望ある終わり方になってほっとしました。こんな本をもっと読みたいです。2021/10/08
モルク
138
NICU(新生児集中治療室)に入院している乳児の両親、看護師、臨床心理士、医師などを主人公にした連作短編集。中でも「願う場所」の心ちゃんの話は号泣必至。羊水検査で18トリソミーであることがわかった心ちゃん。夫は中絶さえ口にするが…18トリソミーの赤ちゃんは胎内で亡くなることもあり半数は1ヶ月以内に、9割が1年以内になくなってしまう。そんな心ちゃんとの日々を描く。今日はもう2度と返らない1日…確かにそうなのだ。小さな命の大切さと、それに向き合う人々の姿に感動する。2021/08/04
fwhd8325
126
久しぶりに加藤さんの作品を読みました。Twitterで力を入れて呟いていました。NICUと言う言葉も初めてでこのようなドラマ(ドラマといいっていいのか迷います)があることも初めて知りました。誰もが尊い命を授かって誕生してきた。そして、愛情に包まれている。私には、とても重く、心に響く作品集でした。2021/06/19
sayuri
123
涙。手元に置きたい1冊がまた増えた。NICU(新生児集中治療室)を舞台にした連作短編集。私の息子も生まれてすぐNICUのお世話になった。出産の喜びよりも不安だらけの日々を思い出す。そこには精一杯生きようと戦う子供達がたくさん存在した。身体に管を付けた赤ちゃん達。触れたくても小さな小窓からしか触れられない。NICUに携わる医師・看護師達の思いと、我が子を見守る両親の心の機微が繊細な言葉で紡がれ、胸が一杯になる。生かされている事へ改めて感謝の気持ちが溢れる。ココちゃん、私の息子の名前にも「心」が入っているよ。2021/05/21