出版社内容情報
川瀬 七緒[カワセ ナナオ]
著・文・その他
内容説明
東京の高円寺南商店街で小さな仕立て屋を営む桐ヶ谷京介は、美術解剖学と服飾の知識によって、服のシワを見ればその人の受けた暴力や病気などまでわかる能力を身につけていた。そんな京介が偶然テレビの公開捜査番組を目にする。10年前に起きた少女殺害事件で、犯人はおろか少女の身元さえわかっていない。とりわけ遺留品として映し出された奇妙な柄のワンピースが気に掛かり、警察への接触を試みるが…。
著者等紹介
川瀬七緒[カワセナナオ]
1970年、福島県生まれ。文化服装学院服装科・デザイン専攻科卒。服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーに。デザインのかたわら2007年から小説の創作活動に入り、’11年、『よろずのことに気をつけよ』で第57回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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nobby
340
「次は行動に気をつけたいと思いますよ」うん!主役の台詞通りに続編必ずお願いします!あらためて川瀬さんは魅力的な人物を描くのが上手い!正直、美術解剖学とか服飾関係に古着に生地なんて個人的には全く興味が無い…それを衣服のシワや汚れや損傷具合から既往歴や大病や死因まで言い当てるなんてキャラ作り出されたら降参(笑)そしてまた脇を固めるのが50年代ポップな服装を身にまといヴィンテージ衣類目利きに秀でた若きゲームオタク女性とはもう最強!二人がジワジワ紐解いた未解決事件の結末に重なる『ヴィンテージガール』は切ないけど…2021/03/23
パトラッシュ
286
服の状態から着ている人の病気や体質までも見抜く能力を持つ主人公とその仲間たちが、専門知識を駆使して未解決事件の解明に乗り出す。漫画『王様の仕立て屋』を思わせる服飾探偵とはユニークな切り口で、濃ゆいキャラが揃って面白いドラマが展開する。ミステリとしては合格点だが桐ヶ谷たちが挑むのにふさわしい事件を拵えすぎたようで、夜逃げした一族が戸籍がないまま半世紀も裏社会で過ごして子供まで儲けていたとの設定には無理がある。アトミック柄をはじめ初耳の服飾用語が頻出し、調べて理解しないと進めない。今少し、こなれが足りないか。2021/05/22
ひさか
263
小説現代2020年10月号掲載の仕立屋探偵桐ヶ谷京介を改題して、2021年2月講談社から刊行。解剖学と服飾をきわめた主人公が、その道のプロ達の力を借りて事件を解決して行く。登場するプロ達は、その活躍に爽快感があり、楽しめました。同じ作者の革命テーラーに通ずるところがあります。京介の探偵業にかかわって行く心意気にエールを送ります2021/04/17
fwhd8325
218
とにかく面白かった。連作ものかと思ったら長編でした。視点がとても新鮮です。徐々に明らかにされていく過程もグイッと興味を引きつけて放しません。社会性にあるテーマを取り入れ、設定ありきの探偵小説ではないと思います。きっと次回作もあるだろうと期待します。2021/10/30
しんたろー
213
着衣で身体的な情報を推理する服飾ブローカー・桐ケ谷京介が10年前に殺された少女の身元を突き止めてゆくミステリ。若きアンティーク店主・小春、手芸店主・ミツ、曲者刑事・南雲など、著者らしい漫画チックで個性的なキャラ立ちした登場人物たちで楽しく読ませるが、長編としては内容が薄く感じたし、京介の涙に乗れなかったのも正直なところ…少女サイドの哀しい物語が後説で簡単に語られてしまうのが理由かも知れない。途中で少女の悲劇が挿入されていれば、京介と一緒に泣けたと思う。それでも次作を期待できるシリーズ1作目にはなっている。2021/09/13