内容説明
真珠湾攻撃前夜の太平洋を横断、北米大陸、欧州を視察してベルリンへ。諜報活動の実態は?ソ連のドイツ侵攻時に在ベルリン大使から下された決死の司令とは?ナチス・ドイツの崩壊に立ち会いソ連占領下から脱出、シベリア鉄道で祖国へ―ファシズムの欧州を目撃した青年外交官のオーラル・ヒストリー。
目次
第1章 教養主義
第2章 若き外交官のアメリカ
第3章 動乱の欧州へ
第4章 学究の日々と日米開戦
第5章 在独日本大使館・一九四四
第6章 ベルリン籠城
第7章 ソ連占領下からの脱出
第8章 帰朝
吉野文六ドイツ語日記
著者等紹介
佐藤優[サトウマサル]
1960年、東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館勤務などを経て、本省国際情報局分析第一課に配属。主任分析官として対ロシア外交の分野で活躍した。2005年『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』で作家デビューし、’06年の『自壊する帝国』で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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breguet4194q
81
吉野文六というスーパーエリートが、ナチスドイツの崩壊前後を、現地での体験をもとに証言してます。当時の外交文書も掲載され説得力があり、暗雲立ち込めてくる社会状況がわかりやすいです。また、外交官の視点から見えてくる人間模様は、細かく描写されており面白い。インタビュー形式も織り交ぜているので読みやすく、当時のリアリティが肌身で感じられます。幼少期からの成長過程も掲載されてるので、青年期に培った思想哲学が、ドイツ外交官時代や、その後の生き方を決定していることまで掘り下げて論説されてます。読み応えのある一冊です。2021/10/03
Isamash
31
佐藤優と吉野文六(元西独大使)の対談本。吉野はソ連に攻め込まれた時ベルリン大使館に勤務。沖縄返還時の密約の存在を認めた稀有の外交官とのこと。本書では、吉野の半生(敗戦時まで)を佐藤が聴くかたち。若い吉野がドイツに赴任する際、ハワイから米国横断してスペイン経由で独に赴任。外務省の教育的措置に佐藤は感心。ソ連軍迫る中、邦人安全確保もせずに大島ドイツ大使は吉野らを残しベルリンから物見遊山で田舎に疎開。空襲激しい中、吉野に2回酒を運ばせたともいう。ヒトラーに心酔し日本を戦争に巻き込んだ指導者の責任感の無さに唖然。2022/08/23
k2ro
7
学校で英米流経験主義哲学を学んだ若い外交官が目の当たりにするナチス・ドイツ第3帝国の崩壊。戦後の平和な国で生活する我が身には想像し得ないカタストロフィ。 抽象的観念から生まれる愛国心は,国家と国民に多大な災いをもたらす。真の愛国心とは,自分の愛する人,具体的に触れ,抱きしめることができるパートナー,子供,親たちに対する具体的愛情の延長線上にしか生まれない。自分の中に原理原則を持っている人は格好良い。 極限の状況で自らの行動の原則を形作るのは教養であり、愛情である事を教えられる。2021/04/09
元よしだ
3
読了~長かった。 【メモ】陸軍中野学校→吉原政己先生 (東京帝国大学で平泉澄の教えを受けた右翼理論家。) 鶴田国衛少佐→遊撃戦教令。 2025/03/06
Yasuhisa Ogura
3
第2次大戦中、ベルリンの日本大使館に勤務していた外交官の吉野文六氏に佐藤優氏がインタービューしたもの。吉野氏はドイツの敗北までベルリンに駐在しており、ナチスの崩壊の過程と日本大使館の内情が語られている。他の文献と併せて読むことにより、当時の状況が立体的に浮かび上がってくる。大島大使については、独語に堪能とされているが「自由に意思疎通を行えるレベルには達していなかった」、またソ連軍が迫るとオーストリアに避難してしまい、吉野氏が大使館の倉庫にある酒と肴の輸送を命じられたなどのエピソードも語られている。2021/10/31