内容説明
若き家庭裁判所調査官・瀬良真昼。どんな少年も見捨てない。そう決めて彼らと向き合ってきたはずだった。しかし、狐面の少女が犯した凄惨な殺人事件を目の当たりにして、信念は大きく揺らぐ。不可解なことに、被害者は全員同じ高校に縁のある人々だった。被害者遺族の男子高校生を担当する真昼は、思わぬ形で事件の真相に迫り―?圧巻の青春リーガルミステリー。
著者等紹介
五十嵐律人[イガラシリツト]
1990年岩手県生まれ。東北大学法学部卒業。弁護士(ベリーベスト法律事務所、第一東京弁護士会)。『法廷遊戯』で第62回メフィスト賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
373
弁護士作家・五十嵐律人さんの第2作は読者の完全に好き嫌いが分かれる作品だと言えるでしょうね。主人公は家庭裁判所調査官の瀬良真昼で常に過ちや事件を起こした少年たちの立場に立ってサポートする職業の人間である。「やり直せるから、少年なんだよ」と犯罪者の少年達のの更生を信じて彼らを長い目で見守るのである。だが狐面の少女による凄惨な大量殺人事件の発生を知って彼の心は大きく揺らぐのだった。著者の作風は固くてユーモアは皆無に近く本書で唯一面白さを狙ったのが人名で、佐原砂(スナ)と漠(バク)の兄弟でサハラ砂漠になります。2023/07/18
パトラッシュ
286
不可逆とは元に戻れない一線を越えること。少年法で保護される年少の犯罪者であっても起こした事件の凶悪さから、神戸の少年Aのように「大人と同様に扱うべきでは」との議論を引き起こしてきた。当時大阪に住んでいたので、日曜の昼間に公園が無人になるなど住民に走った社会的戦慄は覚えている。親が子を慈しまず絶望しか与えず誰にも相談できなかったがために、追い詰められた少年が一線を越えてしまう姿が痛々しい。自分はやり直せた家裁調査官の瀬良は、彼らに希望を与えようと苦闘する。絶望は簡単に手に入るが希望を掴むのは難しいのだから。2022/01/23
しんたろー
275
五十嵐さん2作目は少年犯罪者の調査官・瀬良真昼を主人公にした13歳の少女が起こした殺人事件を追った物語。導入からショッキングな事件で惹き込まれるし、表題の「更生することのない」という意味を始めとして様々な意味で少年法の現実を考えさせらる社会派ミステリで興味深かった。半面で青春物語にもなっていて切なく甘酸っぱい気持ちにもなる。重いテーマの割にスイスイ読めるのは筆力の高さ故だろう。1作目に比べると驚くような謎解き&真相ではなかったが、瀬良を中心に調査官たちのキャラが巧く描かれていて、続編が創れると思った。2021/03/19
ウッディ
221
動画サイトにアップされた13歳少女による殺人、下衆な行為で少年少女を傷つけてきた大人たちを残忍な方法で殺害した事件は、正義の在り方とともに、少年犯罪者の取り扱い方も問うものであった。犯罪の低年齢化が進む昨今、少年法の適用年齢や被害者感情、罪のありかたなどが問題になる。教育・指導すれば更生する可塑性を有する存在として、少年の刑は軽減され、鑑別所での指導に重きが置かれる。けれど、罪の意識を感じない少年たちを同様に扱っても良いかという問題提起とともに、やり直せると信じる家裁調査官の想いが印象的だった。2021/06/23
いつでも母さん
213
一人は人の気持ちが理解できない。もう一人は人の痛みが理解できない。そこに少年法が絡んで、この姉妹はしたたかに生き残る。自らも虞犯少年だったと明かす家庭裁判所調査官・瀬良真昼が主任の早霧と対峙する残虐な事件の裏側と真相に私の気持は萎えてくる。「やり直せるから、少年なんだよ」は苦しい。どうしてもどうしても不可逆少年は存在するような気がする。ただ「人生を諦めるには、十四歳は早すぎる」私もそう思う。そう言ってやりたい。2021/02/17