内容説明
漢王朝滅亡(二二〇年)の衝撃は、この国に大きな岐路をもたらした。流浪の英雄、蜀の劉備。一流の詩人でもあった魏の曹操。老獪な現実主義者、呉の孫権。そして朝鮮半島と邪馬台国をめぐる国際関係。一〇〇年の混乱を経て、中国に統一帝国を志向する理念が確立する。日本人に最も親しまれてきた外国文学『三国志演義』から解き明かす大抗争の時代。
目次
序章 華麗なる乱世
第1章 斜陽の漢帝国
第2章 群雄割拠
第3章 三分天下
第4章 三帝鼎立
第5章 三国の外交と情報戦略
第6章 かげりゆく三帝国
第7章 三教鼎立の時代
第8章 文学自覚の時代
第9章 邪馬台国をめぐる国際関係
終章 三国時代と現代の東アジア
著者等紹介
金文京[キンブンキョウ]
1952年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。京都大学大学院中国語学文学専攻博士課程修了。慶應義塾大学助教授、京都大学人文科学研究所教授などを経て、京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
59
シリーズ4 手紙の偽造、て可笑しい。火の無いところに煙を立てた、文学作品て(敵国を混乱させるのが目的) 三国志は華 仏教、道教、儒教、が盛んになったのもこの時代2024/04/12
k5
48
7月の末にはじめて上海を訪れまして、私のなかでの中国への関心が高まっている昨今、馴染みのあるこの時代から読んでみました。やはり、登場人物のほとんどが知っている人なので読みやすい。物語として楽しんでいた世界を、歴史の複眼で読み返すのは実に面白い体験だったのですが、伊籍が孫権に一礼した直後、「無理して無道の君主に仕えることはあるまい」と言われ、「一拝一礼になんの苦労がありましょう」と答える場面など、外交の場での登場人物の皮肉のきいたウィットが強調されているのが私好みでした。2023/09/10
崩紫サロメ
19
呉の視点から三国志の世界を描き直す、と言っても、三国志演義的な世界を呉から描くという意味ではない。呉と韓半島と倭の交通の可能性など、中国史、あるいは日本史の枠組みを超えてこの時代の結びつきを描いている。また、当時の正統性を巡る議論と現在分断情境にある東アジアの正統論を重ねて論じている点も興味深い。また、本書は中国・台湾版だけでなく成均館大学出版部から韓国版も出版されているという。機会があれば読んでみたい。2023/11/02
Tomoichi
19
馴染み深い三国志の時代を後漢から晋の成立まで一通りの説明と宗教・文学・邪馬台国と解説されるのでザ・歴史って感じで好感の持てる構成でした。この時代はまだ道教も中国仏教も黎明期なので、何か少し不思議な感覚になります。だって新興宗教みたいなものってことでしょ(笑)2021/12/28
サケ太
18
ありがたい。非常にありがたい一冊。三国志というと、漫画媒体(横山三国志、蒼天航路)やゲーム(三国無双)でしか知らない時代なので、かなり興味深かった。全体的な流れ、赤壁以後については無知と言っても良かったので、確認できたのは良かった。魏、呉、蜀の土地ごとの特色や比較、特色なんかも面白い。この時代に起きた文化的な変化の数々。詩というものが変化した時代とは知らなかった。2021/10/07