内容説明
学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、激しい雨が降り続くなか、連続殺人の幕が上がる。刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも―夜は明ける。新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ。
著者等紹介
阿津川辰海[アツカワタツミ]
1994年東京都生まれ。東京大学卒。2017年、新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」により『名探偵は嘘をつかない』(光文社文庫)でデビュー。以後、ミステリ・ランキングの上位を席巻。’20年代の若手最注目ミステリ作家。他に『星詠師の記憶』(光文社)、『紅蓮館の殺人』(講談社タイガ)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
565
前作より好き。といいつつ、一作目詳細を覚えておらず、ネタバレ解説で復習後に着手。『紅蓮館~』は、とにかく名探偵名探偵と鬱陶しいくらい厨二していてゲンナリだった。今回もその色合いはあるが、家庭環境の問題に微妙にすり替えられ、あまり目立たない。苦悩の振り切り方も、これくらいのわかりやすさだと、割り切って読める。事件に関しては、死体の靴の問題、犯人の身長の錯誤の問題がややスッキリしない。また、こういう"蜘蛛"系の犯罪、「他にいくつも準備はしてあって、その中のいくつかが発動した」的なオチは、ずるいし興を削ぐ。2021/03/05
starbro
422
阿津川 辰海、 3作目です。このミステリーがすごい!2022年版6位他、各種ミステリランキング上位ということで読みました。最近、ゾンビやら奇を衒ったミステリが多い中、比較的オーソドックスな本書は安心して読めます。昨年の『透明人間は密室に潜む』ほど、インパクトはありませんでしたが・・・ https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003454782021/12/23
パトラッシュ
333
ミステリとしては面白く、よく考えられている。洪水が迫る田舎の城館で起こる連続殺人を、靴一足をヒントに解いていく推理は鮮やか。黄金期の本格ファンなら満足するだろうが、残念ながら人間が描けていない。息子が、兄が殺されても誰もショックを受けず、真犯人が暴かれても平然としている面々ばかりなのだ。犯人の動機も「そこまでやるか」と納得しがたく、謎を重視するあまり探偵に都合のいい事件をこしらえた印象が否めない。それにしても前回は山火事で今回は水害が迫る中での事件となると、次作は大地震か雪崩か沈没寸前の船内でのドラマか。2021/06/12
stobe1904
247
【このミス2021 第2位】前作の『紅蓮館の殺人』は山火事によるクローズドサークルだったが、本作は台風によって孤立した山奥の館が舞台。本格ミステリの面白さを凝縮した意欲作だと思うが、リアリティは度外視したとしても、仕掛けとトリックに無理があるような違和感が残ったのが残念。ミステリとしての完成度は『紅蓮館の殺人』のほうが高いと思うが、この作品の迫りくる水害の脅威、錯綜してこじれた家族間の解明、結末に向け高まる緊迫感など、エンタメとしてはとても面白いと思う。次作に期待が高まる作家の一人。★★★★☆2022/04/15
麦ちゃんの下僕
235
なるほど…「蜘蛛」の正体は予想通りとは言え、事件の重層的な構図には感心させられました…が、ごめんなさい。肝心な部分で○○○の問題を無視しているのが許せません!そもそも○が合わないし、誰も気付かない訳ないでしょう!?それから「800㍉/時」なんて雨もあり得ない!そんな雨が現実に降ったなら、外に出られないどころか館自体が崩壊するのでは!?誤植も最低3ヶ所あった他、記述のおかしな部分も複数ありましたし…やっぱり“語り手”の田所にはイライラさせられる(苦笑) やはり僕は、阿津川さんとの相性は良くないみたいです…。2021/11/27