出版社内容情報
廣岡 正久[ヒロオカ マサヒサ]
著・文・その他
内容説明
西暦九八八年、キエフ大公ウラジーミル一世は東方キリスト教(ギリシア正教)を国教に採用した。以来、ロシアはビザンチン文明圏に属し、同じキリスト教を共有しながら、西欧とは別の歴史を歩んできた。時に熾烈な迫害を受け、時にロシア民族主義を鼓吹して、人々の精神的支柱となってきたロシア正教会の歴史を、政治と社会の流れの中で捉えた労作。
目次
第1章 受洗千年祭を祝ったロシア正教会
第2章 生き方としてのキリスト教信仰
第3章 ロシア愛国主義の源流
第4章 第三のローマ=モスクワ
第5章 正統と異端
第6章 国家による教会支配
第7章 ロシア革命と“無神論”体制の誕生
第8章 ソヴィエト体制下のロシア正教会
第9章 宗教ルネッサンスと内部分裂のジレンマ
結章 ソ連邦崩壊後のロシア正教会と東方正教世界
著者等紹介
廣岡正久[ヒロオカマサヒサ]
1940年大阪生まれ。大阪外国語大学ロシヤ語科卒業。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程中退。法学博士(京都大学)。京都産業大学法学部教授を経て、同大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
66
ロシア正教という「ファインダーを通して」ロシア史を追う一冊。キエフ公国のウラジーミル聖公のギリシア正教導入から始まって、タタールの軛という苦難の時代における影響力の拡大、ツァーリ制や共産党体制下での規制や迫害と国家との独特の癒着関係などが語られます。その歴史を受けて現在のロシア正教会が抱える矛盾や、ソヴィエト崩壊前後の民族主義の高まりにより多様な民族を抱えるロシア正教会が直面した危機と課題、ビザンツ帝国滅亡以来優位を確立していたギリシア系正教会との新たな関係などにも目配りされていて、大変興味深い本でした。2022/01/03
榊原 香織
64
ユロジヴィ,ソボールノスチなど、ドストエフスキーに出てくるキーワード。 スターリンもひどかったけど、フルシチョフの迫害もかなり。 ウクライナ正教との関係が1993年のこの時点でも分裂しそう。根深い2024/04/27
松本直哉
25
普遍性と理性とラテン語によるカトリックと違って、民族性と感情とロシア語によるロシア正教は、民衆の心の奥底に響く何かを持っていたために、度重なる弾圧にも屈せずに生き抜いてきた。ソビエトの非人道的な迫害を毅然として批判したチーホン総主教のような政府批判の一方、独ソ戦では民族感情に訴えて戦意を鼓舞し、結果的に政府に利用されることになる正教会の、国家との距離の取り方は、安易な単純化を許さない。チェルノブイリの事故をきっかけに信者が増えた事実は、依然としてこの宗教が人々の心の拠り所であり続けていることを示す。2022/08/25
MUNEKAZ
16
もとは1993年刊行。当時のソ連崩壊の衝撃冷めやらぬといった熱量をもった文体が印象的。陰に陽にロシアの政治と向き合ってきたロシア正教の、一筋縄ではいかない千年の歩みが紹介されている。ローマ・カトリックのような超国家的で普遍的な宗教ではなく、各国ごとに独立性を保った正教会らしく、ロシア民族主義との親和性の高さが興味深いところ。ソ連崩壊後のウクライナ正教会との対立から分離に至る流れは、今回のウクライナ侵攻を理解する上での補助線になるのではと。2022/03/02
ジョニジョニ
13
ドストエフスキーやトルストイを読んでいて、よくわからなかったロシア正教。千年の歴史を駆け足で読ませてくれて、おぼろげに理解しました。現在の戦争は残念ながら、すぐには終わりそうにない。であれば、両者の歴史を少しでも、知っておきたい。世界は広すぎて、全然知らないことばかりだから、なんでもめるんですか?と、聞くことしかできません。少なくともロシア正教の現総主教、キリルさんは、プーチンさんを支持している。そしてキエフは、千年前の正教始まりの地。でも今は、カトリック系のウニヤ教会の勢力が強い。イエッサが泣きますよ。2022/04/11
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- 和書
- 鍛冶屋の女房 〈続〉